2014年4月28日月曜日

ソフトバンク傘下の米携帯、音楽配信で提携

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2503D_V20C14A4000000/



 「音楽は愛の糧」が本当なら、世界中の携帯電話網は愛の糧に満ちてめまいがしているに違いない。
 欧州、アジア、中南米では、顧客をつなぎとめ、競合他社との差別化を図るために、通信会社が携帯加入契約に音楽ストリーミングサービスをバンドルしている。だが、米国の携帯ネットワークはこれまで、音楽の魅力に抗ってきた。
ソフトバンクの孫正義社長。同社は2013年7月に米スプリントを買収している(2月12日)=ロイター
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ソフトバンクの孫正義社長。同社は2013年7月に米スプリントを買収している(2月12日)=ロイター
 4月末に発表予定の提携で、その状況も変わるかもしれない。スポティファイがソフトバンク傘下の米国携帯電話会社スプリントとのタイアップを発表すると見られているのだ。
 両社とも、最初にウェブサイト「リコード」で報じられた提携について事実を追認していないが、この提携案件に詳しい筋によれば、スポティファイのストリーミングサービスはバンドルとしてスプリントの携帯加入者に提供されるという。
■スポティファイの知名度高める
 双方とも利益を得る立場にある。スプリントとしては、市場をリードするストリーミングサービスのスポティファイとの関係から、かっこいいものが好きな若者たちの称賛を得られるし、顧客が大規模な音楽ライブラリーへのアクセスを高く評価すると仮定すると、顧客離れを減らす貴重な道具になる。
 一方、スポティファイは、数百万人に上るスプリントの顧客と直接的なつながりを得られる。だが、潜在的にそれより重要な恩恵は、通信会社との提携から得られるマーケティング支援だ。音楽ストリーミングサービスは、売上高のかなり大きな割合を楽曲ライセンスのために音楽会社に支払う。「音楽会社がひとたび(金銭的な)ギャランティーを取ったら、音楽サービスの手元にはマーケティングに使うお金が大して残らない」。音楽業界をウォッチするミディア・コンサルティングのマーク・マリガン氏はこう話す。
 スプリントは莫大なマーケティング予算を持っており、米国におけるスポティファイの知名度を高めるだろう。スポティファイが新規株式公開(IPO)を模索していることを考えると、タイミングもいい(昨年資金調達を行った際は、スポティファイの企業価値は40億ドルと評価されていた)。

■ビーツにアプローチした孫社長
 米国内のスポティファイの主なライバルの間で、同じくらい大規模な通信大手との提携を行ったのはビーツ・ミュージックだけだ。伝説的な音楽プロデューサーのジミー・アイオビン氏とヒップホップ界の大物ドクター・ドレーが手がけ、レン・ブラバトニク氏やジェームズ・パッカー氏といった大富豪が出資するビーツは、今年1月にAT&Tと提携してサービスを開始した。
音楽の定額配信サービス、スポティファイがスプリントと提携するとみられる=ロイター
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音楽の定額配信サービス、スポティファイがスプリントと提携するとみられる=ロイター
 消息筋によると、ビーツは昨年、ソフトバンクの孫正義氏に一時提携話を持ちかけられたという。孫氏はスプリントとのタイアップの見返りにビーツに10億ドル出すと言ったが、孫氏が求めていた独占契約のレベルを巡り、提案は拒絶された。
 米国では、ストリーミングサービスと携帯電話会社のパートナーシップは珍しいかもしれないが、携帯電話市場が細分化している欧州では古くから存在する。また、欧州では音楽ストリーミングが米国より成熟している。例えばスウェーデンでは、音楽売り上げ全体の70%近くをストリーミングサービスから得ている(米国では約20%)。
 スポティファイはドイツではドイツテレコムと、オランダではKPNと提携関係にある。競合サービスのラプソディーや、オレンジが出資するフランスのデジタル音楽サービスのディーザーも通信会社と提携している。
 国際的には、最も積極的に動いてきたストリーミング会社の1社がディーザーで、同社は欧州、中南米、アフリカ、アジア各国で25社の通信会社とバンドル契約を結んだ。だが、米国ではまだサービスを開始していない。米国の携帯電話会社、もしかしたらTモバイルとのパートナーシップがディーザーの米国進出の最善策になるのではないか?
■サブスクリプション型サービスに高まる期待
 前出のマリガン氏によれば、音楽サービスを携帯加入契約とバンドルすることは、デジタル音楽にとって「第3の道」だという。というのは、無料の広告支援型ストリーミングサービスを聴く人と、ハイテクに精通し、サブスクリプション型(月額など定期的に決まった料金を支払う)音楽サービスを使う新し物好きの人たちとのギャップを埋めることができるからだ。

音楽売り上げが落ち込んでいる今(国際レコード産業連盟=IFPI=によると、2013年には4%減少した)、サブスクリプション型音楽サービスは暗がりの中の明るいスポットだ。デジタルダウンロード販売は2%減少したが、音楽サブスクリプションからの売り上げは50%増加して11億ドルに達した。
 サブスクリプション型サービスが、より多くの視聴者にアピールするためには、通信会社のマーケティング力が必要になる。だが、携帯電話会社がどれほどこの場にとどまる気かは不透明だ。「通信会社は概して、本格的な関係よりも一夜限りの関係に興味があった」。マリガン氏はこう言い、通信会社がバンドルされた音楽サービスの売り込みへの熱意を失い、別のタイプのコンテンツとマーケティングに焦点を移した事例を引き合いに出す。
 目前に迫ったスポティファイとスプリントの契約はまだインクも乾いておらず、ビーツ・ミュージックとAT&Tとの提携は、始まってからまだ数カ月しかたっていない。それでも音楽業界には、こうした結婚が長続きすることを期待する理由がたくさんある。
By Matthew Garrahan, the FT’s global media editor
(2014年4月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(翻訳協力 JBpress)
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