2014年4月28日月曜日

格安スマホ、家電量販も ビックカメラやヨドバシ


http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ170FM_X10C14A4MM8000/


家電量販大手のビックカメラは格安のスマートフォン(スマホ)販売に参入する。端末代込みの利用料は大手携帯電話会社の半額以下の月2830円(税別)で、18日から店頭販売を始める。4日から月2980円のスマホを売り始めたイオンよりも安くする。5月にはヨドバシカメラも販売に乗り出す方針。大手小売店の相次ぐ参入で格安スマホは本格的な普及期に入りそうだ。
 格安スマホはNTTドコモなど大手携帯電話会社から事業者が回線を借りて独自にサービス提供する。限られた回線を多くの利用者で分け合うためデータ速度は遅い。その分、高価な通信設備を自前で持たないので料金を安く抑えられる。イオンの格安スマホは当面の販売目標の8千台が月内にも売り切れる見通し。
 イオンを追うビックカメラはスマホとタブレット(多機能携帯端末)計3種類を計1千台販売する。ビックカメラ35店と傘下のコジマの一部店舗で扱う。通信サービスはインターネットイニシアティブ(IIJ)がドコモの回線を借りてビックカメラの客に提供する。
 中堅通信機器メーカーのコヴィア(横浜市)のスマホと毎月1ギガ(ギガは10億)バイト分のデータ通信が使える。月1ギガはスマホ利用者の平均的なデータ通信量とされる。通話料は30秒で20円とドコモと同じにした。MNP(番号持ち運び制度)にも対応し他社からの乗り換えを狙う。途中で解約しても端末代の未払い分だけ払えば済む。
 ヨドバシも日本通信の通信サービスを使った格安スマホを5月にも売り出す。端末込みの料金は月3千円前後で検討している。
 総務省はスマホ市場の裾野を広げるため、ドコモなどが回線を貸し出す際の接続料を引き下げるよう促す。中国メーカーなどは1台1万円程度の低価格スマホを相次ぎ開発しており、スマホサービスの低料金化に一段と拍車がかかりそうだ。

オリエンタルランド、営業益最高1100億円 14年3月期 東京ディズニーリゾート 入園3000万人超

http://www.nikkei.com/markets/kigyo/gyoseki.aspx?g=DGXNASGD2103I_21042014MM8000



レジャー消費の好調を背景に、東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドの業績が拡大している。2014年3月期の連結営業利益は前の期より35%増の1100億円強とこれまでの見通し(1066億円)を上回り、過去最高になった。開業30周年のイベント効果や、円安による訪日外国人の増加を背景に入園者数が大きく伸びた。
 売上高も従来の見込みを約100億円上回り、19%増の約4700億円と過去最高を更新したもよう。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを合わせたTDRの入園者数は14%増の3129万人と、初めて3000万人の節目を超えた。
 TDRでは、昼間のパレード一新やアトラクション改装など集客のためのメニューを相次いで投入。その効果が表れて、首都圏だけでなく地方からも客足が伸びた。円安を追い風に、所得水準の向上が続く東南アジアなどからの来園者も増えた。食事や記念グッズの購入など1人が園内で使うお金も増え、客単価も過去最高になったもよう。2月の大雪など悪天候の影響を吸収し、想定を上回る利益を確保した。
 4月以降、客足に目立った落ち込みはみられず、消費増税による料金引き上げの影響はそれほど出ていない。ただ、会社側では30周年効果の反動で15年3月期の利益は減るとみているようだ。

東京ディズニーリゾート、3年で1200億円投資

http://www.nikkei.com/article/DGXNZO70489110X20C14A4TJC000/



東京ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)を運営するオリエンタルランドは、2014年度から設備投資を大幅に増やす。16年度までの3年間に11~13年度実績を6割上回る1200億円規模を計画、TDR内の2つのテーマパークのアトラクションの入れ替えなどに充てる考え。13年度に初めて入場者数が3千万人を超えており、テーマパークの混雑緩和や集客力の向上を急ぐ。
昨年度、入場者が初めて3000万人を突破した(千葉県浦安市の東京ディズニーランド)
昨年度、入場者が初めて3000万人を突破した(千葉県浦安市の東京ディズニーランド)
 28日に決める新中期経営計画に盛り込む。14年度は13年度実績の240億円を8割上回る420億円、15、16年度も400億円台の投資を続ける。14、15年度は東京ディズニーランドを中心にアトラクションやサービス施設を拡充する方針だ。東京ディズニーシーも16年度以降に施設の更新・改良に取り組む。
 TDRは13年度に開業30周年記念の大型パレードや3Dアトラクションの刷新が人気を呼び、初めて入場者数が3千万人を突破した。14年度は1割程度の反動減を見込むも、15年度の回復を予測。年間3千万人を恒常的に受け入れられる施設の整備を目指す。
 アジアを中心とする訪日外国人客の増加や20年の東京五輪開催も追い風になるとみて、17年度以降も積極投資を維持する方針だ。

XP搭載ATMは安全か 国内にまだ17万台

http://www.nikkei.com/article/DGXZZO70396590V20C14A4000000/



 米マイクロソフト(MS)が今月、サポートを終了した基本ソフト(OS)「ウィンドウズXP」。サイバー攻撃に対する弱さから企業や自治体が新しいOSを搭載したパソコン(PC)への置き換えを急ぐ中、2019年ごろまで身近な所に残りそうなXP搭載機器がある。金融機関のATMだ。いまなお国内で稼働するATMの9割でXPが使われている。インターネットと直接つながっていないATMがサイバー攻撃に遭う可能性は小さいとされるが、海外では被害も報告されており、安全とばかりは言い切れない。
■多くはPC用のXPを搭載しているが……
全国にATMは約19万台あるが、そのうちXPを搭載するのは17万台とされる
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全国にATMは約19万台あるが、そのうちXPを搭載するのは17万台とされる
 XPには「PC用」と産業機械などで使われる「組み込み系」の2種類あり、MSがサポートを終了したのはPC用。組み込み系のXPのサポート終了は16年1月の予定で、まだ猶予がある。だがATMの多くは、サポートが終了したPC用が使われている。ATM全体をXPで制御している機種や、独自のOSを使いながら機能の一部をXPが受け持つ機種など、使われ方は様々だ。
 ATMの設置台数は国内で約19万台とされる。金融情報システムセンターによると、国内の銀行の支店などで使われているATMは13万7030台(12年3月時点)。これとは別に、全国で約5万店あるコンビニエンスストアの多くにもATMが設置されている。
 関係者の話を総合するとこのうちXPを積んでいるATMは約17万台にのぼり、全体の9割を占める。ATMの主要メーカーはOKI、日立オムロンターミナルソリューションズ、富士通フロンテックで、ほぼ国内市場を3分している。
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 金融機関やメーカー各社はこうしたXP搭載ATMが、サポート切れで直ちに危険になるとは見ていない。過去に一定のセキュリティー対策を取り入れているほか、いずれも銀行とATMのみをつなぐ「閉塞ネットワーク」で口座情報などをやりとりしており、インターネットとは隔絶されているためだ。「外部から侵入したり情報を盗んだりすることはできない」(ATMメーカー)と見ている。
 金融機関は新札導入を機に04年ごろ、一斉にATMを更新。この際にXPを使った機種が広まった。ATM各社は11年ごろから使用するOSを「ウィンドウズ7」などに切り替えているが、XP搭載のATMが完全に引退するのは19年ごろになる見通しだ。XP搭載機器は、ATMのほかPOS(販売時点情報管理)レジや自動販売機も引き続き使われている。

■メキシコではウイルスで現金引き出し事件も
 海外ではXP搭載のATMがウイルスに感染して、現金が引き出される事件が発生している。米セキュリティー会社のシマンテックが昨年9月にウイルスを特定した。
 メキシコで発生した犯行の手口はこうだ。ATM内部の保守基板のUSBポートに携帯電話をつないで、ウイルスを送信する。あとは別の携帯電話からATM内部に隠した携帯電話に指令を出し、ATMを乗っ取った。USB接続機器を自動実行する、XPの初期設定を悪用したと見られている。
 日本でもATM保守担当者が加担するなどして、同様の事件が起こる可能性は排除できない。銀行の情報システムを巡っては、管理や保守を受託する企業の社員らがキャッシュカードを偽造する事件も起きており、「身内」だから不正が起きないという前提には立てない。OSに脆弱性があれば、そこが狙われる可能性は残る。
 シマンテックの日本法人(東京・港)の林薫主任研究員は「一刻も早くXPから7や8に移行すべきだ」と注意喚起している。
(浅山亮)

ソフトバンク傘下の米携帯、音楽配信で提携

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2503D_V20C14A4000000/



 「音楽は愛の糧」が本当なら、世界中の携帯電話網は愛の糧に満ちてめまいがしているに違いない。
 欧州、アジア、中南米では、顧客をつなぎとめ、競合他社との差別化を図るために、通信会社が携帯加入契約に音楽ストリーミングサービスをバンドルしている。だが、米国の携帯ネットワークはこれまで、音楽の魅力に抗ってきた。
ソフトバンクの孫正義社長。同社は2013年7月に米スプリントを買収している(2月12日)=ロイター
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ソフトバンクの孫正義社長。同社は2013年7月に米スプリントを買収している(2月12日)=ロイター
 4月末に発表予定の提携で、その状況も変わるかもしれない。スポティファイがソフトバンク傘下の米国携帯電話会社スプリントとのタイアップを発表すると見られているのだ。
 両社とも、最初にウェブサイト「リコード」で報じられた提携について事実を追認していないが、この提携案件に詳しい筋によれば、スポティファイのストリーミングサービスはバンドルとしてスプリントの携帯加入者に提供されるという。
■スポティファイの知名度高める
 双方とも利益を得る立場にある。スプリントとしては、市場をリードするストリーミングサービスのスポティファイとの関係から、かっこいいものが好きな若者たちの称賛を得られるし、顧客が大規模な音楽ライブラリーへのアクセスを高く評価すると仮定すると、顧客離れを減らす貴重な道具になる。
 一方、スポティファイは、数百万人に上るスプリントの顧客と直接的なつながりを得られる。だが、潜在的にそれより重要な恩恵は、通信会社との提携から得られるマーケティング支援だ。音楽ストリーミングサービスは、売上高のかなり大きな割合を楽曲ライセンスのために音楽会社に支払う。「音楽会社がひとたび(金銭的な)ギャランティーを取ったら、音楽サービスの手元にはマーケティングに使うお金が大して残らない」。音楽業界をウォッチするミディア・コンサルティングのマーク・マリガン氏はこう話す。
 スプリントは莫大なマーケティング予算を持っており、米国におけるスポティファイの知名度を高めるだろう。スポティファイが新規株式公開(IPO)を模索していることを考えると、タイミングもいい(昨年資金調達を行った際は、スポティファイの企業価値は40億ドルと評価されていた)。

■ビーツにアプローチした孫社長
 米国内のスポティファイの主なライバルの間で、同じくらい大規模な通信大手との提携を行ったのはビーツ・ミュージックだけだ。伝説的な音楽プロデューサーのジミー・アイオビン氏とヒップホップ界の大物ドクター・ドレーが手がけ、レン・ブラバトニク氏やジェームズ・パッカー氏といった大富豪が出資するビーツは、今年1月にAT&Tと提携してサービスを開始した。
音楽の定額配信サービス、スポティファイがスプリントと提携するとみられる=ロイター
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音楽の定額配信サービス、スポティファイがスプリントと提携するとみられる=ロイター
 消息筋によると、ビーツは昨年、ソフトバンクの孫正義氏に一時提携話を持ちかけられたという。孫氏はスプリントとのタイアップの見返りにビーツに10億ドル出すと言ったが、孫氏が求めていた独占契約のレベルを巡り、提案は拒絶された。
 米国では、ストリーミングサービスと携帯電話会社のパートナーシップは珍しいかもしれないが、携帯電話市場が細分化している欧州では古くから存在する。また、欧州では音楽ストリーミングが米国より成熟している。例えばスウェーデンでは、音楽売り上げ全体の70%近くをストリーミングサービスから得ている(米国では約20%)。
 スポティファイはドイツではドイツテレコムと、オランダではKPNと提携関係にある。競合サービスのラプソディーや、オレンジが出資するフランスのデジタル音楽サービスのディーザーも通信会社と提携している。
 国際的には、最も積極的に動いてきたストリーミング会社の1社がディーザーで、同社は欧州、中南米、アフリカ、アジア各国で25社の通信会社とバンドル契約を結んだ。だが、米国ではまだサービスを開始していない。米国の携帯電話会社、もしかしたらTモバイルとのパートナーシップがディーザーの米国進出の最善策になるのではないか?
■サブスクリプション型サービスに高まる期待
 前出のマリガン氏によれば、音楽サービスを携帯加入契約とバンドルすることは、デジタル音楽にとって「第3の道」だという。というのは、無料の広告支援型ストリーミングサービスを聴く人と、ハイテクに精通し、サブスクリプション型(月額など定期的に決まった料金を支払う)音楽サービスを使う新し物好きの人たちとのギャップを埋めることができるからだ。

音楽売り上げが落ち込んでいる今(国際レコード産業連盟=IFPI=によると、2013年には4%減少した)、サブスクリプション型音楽サービスは暗がりの中の明るいスポットだ。デジタルダウンロード販売は2%減少したが、音楽サブスクリプションからの売り上げは50%増加して11億ドルに達した。
 サブスクリプション型サービスが、より多くの視聴者にアピールするためには、通信会社のマーケティング力が必要になる。だが、携帯電話会社がどれほどこの場にとどまる気かは不透明だ。「通信会社は概して、本格的な関係よりも一夜限りの関係に興味があった」。マリガン氏はこう言い、通信会社がバンドルされた音楽サービスの売り込みへの熱意を失い、別のタイプのコンテンツとマーケティングに焦点を移した事例を引き合いに出す。
 目前に迫ったスポティファイとスプリントの契約はまだインクも乾いておらず、ビーツ・ミュージックとAT&Tとの提携は、始まってからまだ数カ月しかたっていない。それでも音楽業界には、こうした結婚が長続きすることを期待する理由がたくさんある。
By Matthew Garrahan, the FT’s global media editor
(2014年4月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(翻訳協力 JBpress)
(c) The Financial Times Limited 2014. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


2014年4月18日金曜日

「EC市場」徹底研究(後編) 楽天・アマゾン・ヤフー・ZOZOTOWN・LINEモール、勝ち残るのは誰か?

http://bizacademy.nikkei.co.jp/management/mbaessence_platform-biz/article.aspx?id=MMAC2g000009042014



「EC市場」徹底研究(後編) 楽天・アマゾン・ヤフー・ZOZOTOWN・LINEモール、勝ち残るのは誰か?


根来 龍之(ねごろ・たつゆき)
早稲田大学ビジネススクール教授




ヤフーショッピングが狙うのは個人店舗の出店
 前回はプラットフォームビジネスとは何かについて解説しました。そして、電子商取引(EC)サイトのビジネスモデル、中でもヤフーショッピング(Yahoo!ショッピング)がなぜ無料化に踏み切ったのか、その背景について説明しました。今回は、楽天やアマゾン、ZOZOTOWNなども含めた、ECサイトの動向についてさらに詳しく見ていくことにします。
 各ECサイトのポジショニングはどうなっているのでしょうか。横軸に「有料」「無料」、縦軸に「法人」「個人」として、各サイトをプロットしたのが図1です。これを見ると、ヤフーショッピングの無料化は、「法人」が「有料」で出店する位置づけから、「法人」「個人」を問わず「無料」で出店するというベクトルにシフトしたと見ることができます。同社は個人あるいは個人に近い店に出店してほしいと考えているわけです。
図1「有料」と「無料」を横軸にプロットした各ECサイトのポジショニング図1「有料」と「無料」を横軸にプロットした各ECサイトのポジショニング


ヤフーショッピングとヤフオク!の違い
 ヤフーショッピングが狙っている個人には、一体何を売るのでしょうか。主には(1)中古商品、(2)ハンドメイド商品、(3)「自分ブランド」のアパレル、の3つだと考えられます。
 「自分ブランド」というのはセレクトショップや文字通り自分がデザインしたブランドという意味です。つまり個人のお店を新たに取り込もうとしているわけです。例えば、ハンドメイド商品は大量生産ができず、多くの売り上げをあげることはできないですが、一部のコアユーザーが付く可能性があります。
 ではヤフー内では、ヤフーショッピングとヤフオク!(ヤフーオークション)の違いをどのように考えているのでしょうか。
 無料化されたヤフーショッピングは、価格を表示して販売しますが、ヤフオク!はオークションサイトなので、価格が入札によって上がっていくシステムになります。パソコンなどの工業製品の中古品はオークションによって市場価格が形成されますが、アクセサリー類といったハンドメイド商品はオークションによっては市場価格が形成されにくいため、リストプライスの方が向いています。
 また、セレクトショップは目利き力で売っているため、店に対する信頼が必要になります。店のブランドを作りたい人は、自分で店が作れるヤフーショッピングの方が合っているといえるわけです。ヤフオク!はオークションサイトという特徴と、品物ごとに売るという性質があるので、ショップブランドを形成することができないからです。このような形で、ヤフーショッピングとの差別化を図っていくと見られています。

特化型ECが勢力を拡大へ
 ECサイトのポジショニングを今度は、横軸に「総合型」「特化型」、縦軸に「法人」「個人」とした場合は、どうでしょうか(図2)。横軸をこうした場合は、さきほどの3強以外のECサイトも重要なプレイヤーになって来ていることがわかります。特に注目するべきなのは、ファッションブランドを集めた「ZOZOTOWN」で、法人の特化型にプロットされます。一方、楽天やアマゾンは法人の総合型にプロットされます。
(図2)「総合型」と「特化型」を横軸にプロットした各ECサイトのポジショニング(図2)「総合型」と「特化型」を横軸にプロットした各ECサイトのポジショニング
 このほかにも、最短2分でサイトが作れることをうたった「STORES.jp」、スマートフォンに特化した「LINEモール」などがあります。
 今後はECも、スマートフォンで販売することに主眼が置かれるようになると考えられます。そうなるとヤフーショッピングもヤフオク!もライバルは誰なのかと言えば、実は楽天やアマゾンではなく、LINEモールやSTORES.jpといった無料のサイトになると思われます。
 「個人」のお店のエリアが実は未開拓領域だと考えられていて、ヤフオク!やヤフーショッピングの棲み分けが変わってくると見られます。ZOZOTOWNが出資するStores.jpは資金力も豊富でアパレルに今後特化されていくと思われ成長が期待されます。同じ特化型でも、ブランドが確立している店はZOZOTOWNに出店し、将来自分で店を持つ人はまずはSTORES.jpに出店するといったイメージです。
 ヤフーショッピングは特化型での勝負を挑むというよりは、総合型にポジションすることになるでしょう。

カギ握るスマホ化への対応
 これらのECの将来性を占うのに最も重要なポイントは、スマホ化への対応です。つまり、小売りのEC化はまだ十分に進んでいなくても、世の中のスマホ化はどんどん進んでいるため、各社のスマホ市場対応の成否が競争を勝ち抜くためのポイントになるはずです。
 スマホ市場を取るために、ヤフオク!が最も得意としていた、企業ではなく個人が出店するという「個人間取引エリア」のビジネスに、各社がどうかかわるかが注目されるわけです。
 従って、今回のヤフーショッピング無料化は、楽天、アマゾンの対抗策という側面よりも、どのように個人の売り手を取り込むかに主眼があると見た方がいいと思います。大規模な売り手は収支が問題なのであって、売れる場所ならば、月間手数料がかかろうが、出品料がかかろうが構わないのです。つまり、大量に怪しいお店がたくさんあるよりも、売れる店舗が数多くあるプラットフォームがいいのです。また、個人店がたくさん入ってくると、優良店が埋没する可能性があります。
 LINEモールは、スマホ時代には要注目の存在となるでしょう。LINE MALL(LINEモール)も最初は有料で始めましたが、個人の出店を促すことをおそらく刺激するために、すぐに無料にシフトしました。LINEモールは、出店料や出品料とは別の収入源を得るようなモデルにシフトしていくと思われます。可能性としては導線を売る、つまり、広告を売るモデルになる可能性があるかもしれません。
 ヤフーショッピングも最終的に広告を売ることになるでしょう。出店数が増えれば増えるほど、店は埋没するため、広告を出さないことにはなかなか客がアクセスしてくれない。あるいは、ブログなどにアフィリエイト広告を掲載してもらうような流れになると考えられます。
 出店数が増えるほど広告のニーズも増え、それで収入源を得られます。ヤフーショッピングは無料にした結果、広告モデルになっていくはずです。ヤフオク!は店舗向け出店料を無料にすると同時に、個人の出品者のシステム利用料を無料にしましたが、落札手数料をなくす計画はないと考えられ、きちんと収益は確保できる計算だと考えられます。

グーグルのEC参入で新たなモデルが登場
 このほかEC市場で面白いのが、グーグルの動きです。グーグルは今年1月、「Google認定ショップ」を始めるとアナウンスしました。グーグルの審査基準を通った店には認定マークが掲載され、グーグルが認定した店であることが一目瞭然になります。これは楽天のようなモールではなく、個人店がネット上に分散した分散型ECのビジネスモデルとなります。
図3「Google認定ショップ」の画面図3「Google認定ショップ」の画面
 グーグルで商品を検索すると、その検索結果にGoogle認定ショップであることがわかる仕組みとなると思われます。認定マークを付与してもらう代わりに、店舗はマークの掲載料を支払らわなければならないですが、グーグルの検索と連携することで、大きな集客力が期待できるわけです。顧客にとっても、トラブルや商品の損害などが生じた場合は、グーグルが補償金を顧客に支払うため安心です。
 楽天の場合はモールに出店する際に厳しい審査があり、決済システムも楽天が代行しているため、顧客は楽天との信頼関係において商品を購入する。この対極が分散型のグーグルのサービスというわけです。

楽天型ECモデルの限界と可能性
 実は今回ヤフーショッピングで行われる新しい試みとして、出店無料のほかに、「外部リンクの自由化」があります。つまり、ヤフーショッピングの中で販売してもいいし、そこから外部リンクを張って自社のサイトに誘導してもいいのです。そういう意味では楽天型とグーグル型の中間にあるビジネスモデルへの移行が、今回のヤフーショッピングの改革であるとも言えるでしょう。
 では今後はどのビジネスモデルが発展していくのでしょうか。現在のところはネット上のトラブルへの警戒感から、当面は楽天が有利と思います。ただこれは顧客の感覚の問題でもあるので、分散型ECでの取引が増えていくにつれ、徐々に分散型へ移行していく可能性もはらんでいます。
 今後の流れがどうなるかは、実は出店側がどう判断するかにもかかっています。売り上げ規模の大きな店は楽天とヤフーショッピングの両方に出店するケースも増えるはずで、その販売実績によって、傾向も分かってくるはずです。
 どこまで楽天型ECモデルが成長を続けるかについて、今後の大きな分岐点として注目する必要があるでしょう。
◇   ◇   ◇
根来 龍之(ねごろ・たつゆき)
早稲田大学ビジネススクール教授
1952年三重県生まれ。京都大学文学部社会学専攻卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼会社、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て現職。2003年より早稲田大学IT戦略研究所所長、2010年から早稲田大学ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)も務める。ITと経営、ビジネスモデルなどを研究テーマとする。
◇主な著書
『事業創造のロジック』(日経BP社) 2014年
『プラットフォームビジネス最前線』(翔泳社) 2013年
『代替品の戦略』(東洋経済新報社) 2005年

「EC市場」徹底研究(前編) ヤフーショッピングの無料化戦略を読む

http://bizacademy.nikkei.co.jp/management/mbaessence_platform-biz/article.aspx?id=MMAC2g000028032014


「EC市場」徹底研究(前編) ヤフーショッピングの無料化戦略を読む




プラットフォームビジネスを巡る攻防(1)

根来 龍之(ねごろ・たつゆき)
早稲田大学ビジネススクール教授

プラットフォームビジネスとは何か
 TwitterやLINEはなぜ急速に成長できたのか。1998年に創業したグーグルは、なぜ創立15年ほどで世界的に影響力のある企業に駆け上がったのか。それはこうした企業が「プラットフォームビジネス」をコア事業としているからです。
 プラットフォームビジネスとは何か? プラットフォームビジネスは他のプレイヤー(企業・消費者など)が提供する製品・サービス・情報と一緒になって、初めて価値を持つ基盤を提供するビジネスのことです。これは産業をレイヤー構造で表現するとうまく表せます。
 例えば、電子書籍は、コンテンツ、ストア、閲覧アプリ、OS/ハード、通信ネットワークというレイヤーからなります。レイヤー構造においては、ユーザーは各レイヤーの製品・サービスを直接選択して組み合わせて使うことができます。この構造において、各レイヤーの製品・サービス・情報の選択を媒介し、機能するための前提となる基盤が「プラットフォーム」となります。特に、製品の多様性を高める基盤となるレイヤーを「プラットフォーム性が高い」レイヤーと呼びます。
 TwitterやLINEはコミュニケーションの基盤を提供しますが、そこに行きかう情報は利用者が投稿したものです。グーグルは検索という基盤を提供しますが、検索結果として扱う情報は世界中の人々が作ったWebサイトです。TwitterやLINE、グーグルは、これらの情報を媒介するプラットフォームです。
 別の例として東京・渋谷にある「SHIBUYA109」というショッピングビルを考えてみましょう。109は東急グループの商業施設会社が運営していますが、店舗はすべて東急グループとは資本関係がないテナントで、テナント同士が競って売り上げています。従って、109というショッピングビルは、プラットフォームとなります。

プラットフォームビジネスをアカデミックに定義
 「プラットフォームビジネス」をアカデミックに定義すると、「プラットフォームを前提にして利用できる他の製品・サービス・情報(補完製品・補完サービス・補完情報)が存在し、ユーザーがこれを自由に選択する基盤ビジネス」となります。厳密には、さらに(1)製品の品質責任が「補完製品・サービス・情報」の提供者(補完プレーヤー)にある、(2)補完プレイヤーと消費者との間で取引契約がなされる、の2点のうちどちらか1つの条件を満たす必要があります。
 プラットフォームビジネスに近いものも厳密にはそうではないことがあります。新聞社のニュースサイトは(2)に該当しませんが、さらに記事の責任は記者ではなく新聞社にあるのが現在の構造であるため(1)にも該当しません。また、仕入れ販売(自社の責任で製品を仕入れて製品を販売するビジネス)は(2)を満たしませんが、さらに(1)も販売責任がある場合は、厳密にはプラットフォームビジネスではありません。
 それに対して、楽天は電子モールという基盤(プラットフォーム)を提供し、その上に仮想商店が店舗を展開し、消費者は自由に店舗を選択し、取引します。つまり、(1)と(2)を満たしています。従って、楽天という電子モールがプラットフォームとなり、この楽天が展開するビジネスはプラットフォームビジネスと言えます。
 本連載では、数回にわたってこうしたプラットフォームビジネスを詳細に分析していく予定です。第1回は、ECサイトにおけるプラットフォームビジネスを見ていくことにします。

アマゾンもプラットフォームビジネスにシフト
 ショッピングプラットフォームは、商品を買いたい人と商品を売りたいお店をマッチング(媒介)するビジネスです。これをネット上で展開する電子モールはまさにプラットフォームです。しかし、ネットを使った電子商取引(EC)が必ずしもプラットフォームビジネスというわけではありません。売り手が在庫を持って自ら販売するショッピングサイト(直販サイト)は、他店舗とのマッチング機能を持たないのでプラットフォームビジネスではないからです。
 アマゾンは自ら在庫を持つ「リテールビジネス」と売り手と買い手をマッチングする「マーケットプレイスビジネス」(プラットフォームビジネス)を展開しています。Foner Books( http://www.fonerbooks.com/booksale.htm )の調査によると、2000年当時は6パーセント程度だったマーケットプレイス比率は、2013年には39パーセントにまで高まっています(図1)。このようにアマゾンはサービス当初はリテールビジネスが中心だったのですが、それがマーケットプレイス型、つまりプラットフォームビジネスにシフトしてきています。
図1 米Amazon.comのプラットフォームビジネスの売り上げ比率図1 米Amazon.comのプラットフォームビジネスの売り上げ比率
 買い手にとっては一つの売り手の商品だけしか買えないショッピングサイトよりも、多数の売り手から豊富な商品を購入できるプラットフォームのほうが選択の多様性が高くなります。売り手にとっても、プラットフォームに参加することで、競争は激しくなるものの、自社サイトよりも多くの買い手にアクセスできます。

日本のECはまだまだ伸びしろがある
 経済産業省の「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備.(電子商取引に関する市場調査)」によると、2012年の国内のBtoCのEC市場は9.5兆円で、前年度の8.5兆円から12.5%の拡大が見られました(図2)。また、EC化率は前年度の2.8%から0.3%増加して、3.1%となり、今後も成長が見込まれています。
図2 2012年の国内のBtoCのEC市場(経済産業省の「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備.(電子商取引に関する市場調査)」より)図2 2012年の国内のBtoCのEC市場(経済産業省の「平成24年度我が国情報経済社会における基盤整備.(電子商取引に関する市場調査)」より)
 金額ベースでは約9兆5130億円と米国EC市場の半分程度で、EC化率も米国のほうが進んでいます。日本のECはまだまだ伸びしろがあるといえるでしょう。
 このようにEC市場が拡大していく中で、ショッピングプラットフォームの市場も成長が見込まれているのです。

ヤフーショッピングは楽天の6分の1の規模感
 日本の消費者向けEC市場は、楽天、アマゾン、ヤフーの3強となっています。
 この中でも最大の規模を誇るのが楽天で、2013年12月期の楽天市場の流通総額は約1兆5000億円にも上ります。ユニークユーザー数は約1400万人で、約4万の店舗が約1億5000万点の商品を提供しています。
 一方、アマゾンの売上高は世界で610億9000万ドル(約6兆円)ですが、日本市場では約78億ドル(約7000億円)となります(2012年12月期)。
 ヤフーのECビジネスは、ヤフーオークションとヤフーショッピングに大別されますが、ヤフーオークションの流通総額は約7000億円なのに対し、ヤフーショッピングの流通総額はその半分以下の約3000億円でしかありません(2013年度)。
 およその規模感でみますと、楽天がトップで、アマゾンは楽天の約半分、ヤフーオークションは楽天の約3分の1、ヤフーショッピングはヤフーオークションの約半分で楽天の約6分の1といった具合になるわけです。

苦戦していたヤフーショッピング無料攻勢で挽回狙う
図3 無料化を打ち出したヤフーショッピング図3 無料化を打ち出したヤフーショッピング
 ヤフーは2013年10月、電子商取引(EC)サイトの無料化戦略を打ち出し大きな話題となりました。「ヤフーショッピング」に出店するための月額2万5000円の出店料や、売り上げの最大6%の手数料などをすべて無料にするというもので、従来では考えられない方針を打ち出したのです(図3)
 先に見たように、日本の消費者向けECにおけるプラットフォームビジネスの最大企業は楽天であり、流通総額も順調に2桁成長を遂げています。一方、米国では巨人のアマゾンですが、日本では楽天同様2桁成長で伸びてはいるものの、伸び率は楽天の方が高いといえます。
 ヤフーオークションは2桁成長まではいかないものの取扱高は伸ばしていますが、伸び悩んでいたのが、ヤフーショッピングだけだした。こうした市場の背景の中で、ヤフーショッピングが無料化に踏み切ったのです。(後編に続く)
◇   ◇   ◇
根来 龍之(ねごろ・たつゆき)
早稲田大学ビジネススクール教授
1952年三重県生まれ。京都大学文学部社会学専攻卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼会社、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て現職。2003年より早稲田大学IT戦略研究所所長、2010年から早稲田大学ビジネススクール・ディレクター(統括責任者)も務める。ITと経営、ビジネスモデルなどを研究テーマとする。
◇主な著書
『事業創造のロジック』(日経BP社) 2014年
『プラットフォームビジネス最前線』(翔泳社) 2013年
『代替品の戦略』(東洋経済新報社) 2005年

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