2014年4月18日金曜日

ディズニーに学ぶ、夢を実現する“4つのC” 業務効率化とおもてなしは両立するのか?

http://www.sbbit.jp/article/cont1/27819?ref=140417bit




1983年4月15日の開園から今日でちょうど31年、今も衰えない人気を維持し続ける東京ディズニーリゾート。30周年を迎えた2013年の来園者数は3129万8000人(2013年4月~2014年3月末)で、前年から14.8%の伸びを記録。12日には累計6億人の来場者となった。運営会社であるオリエンタルランドの2014年3月期予想の営業利益は1066億円、営業利益率は23.2%で、共に過去最高になる見込みだ。その人気の秘密は一体にどこにあるのか。東京ディズニーランドのオープンに合わせて、初代ナイトカストーディアル(夜間の清掃部門)・トレーナー兼エリアスーパーバイザーとして、ナイトカストーディアル・キャストを育成した、ヴィジョナリー・ジャパン 代表取締役の鎌田洋氏が、代官山 蔦屋書店で行われた講演会にて、そのノウハウを明かした。
執筆:西山 毅

ディズニーの一貫したテーマは、“正義は悪に勝ち、愛は人を救う”

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ヴィジョナリー・ジャパン
代表取締役
鎌田 洋 氏
鎌田氏は1983年の東京ディズニーランド開園に伴い、夜間の清掃部門であるナイトカストーディアルの初代トレーナー兼エリアスーパーバイザーに就任してキャストの育成に従事、1990年には、教育部門であるディズニー・ユニバーシティでオリエンタルランドの全スタッフを指導/育成する重要な役職を務めた。 

 今回、鎌田氏が上梓した『ディズニー おもてなしの神様が教えてくれたこと』(SBクリエイティブ刊)も当時の経験を基に書かれたもので、同氏はこれ以前にも『ディズニー そうじの神様が教えてくれたこと』『ディズニー サービスの神様が教えてくれたこと』『ディズニー ありがとうの神様が教えてくれたこと』の3シリーズを執筆、合計70万部を突破するベストセラーとなっている。 

 講演会の冒頭で、鎌田氏はまずディズニーの魅力について次のように言及した。

「ディズニーリゾートにはミッキーマウスがいるから商売繁盛だと言われる。アトラクションの面白さや園内ショップの豊富な品揃え、キャストの教育の良さなどもよく語られるところだ。もちろんそれらの要素もあるが、しかしディズニーのベースには、人間が生きていく上で重要なテーマがある」 

 1955年、米国でウォルト・ディズニーが最初にディズニーランドを作った時、招待した友人に“素晴らしいものを作ったね、ウォルト、まさにユートピアだ”といわれたという。 

「するとウォルトは、“それは違う、このディズニーランドの中こそ、人間のあるべき姿で、外の世界が異常なんだ”と答えた。ディズニーには人間として普遍的な、大切なものを喚起させるテーマがある」 

 それが、“正義は悪に勝ち、愛は人を救う”というものだ。 

 もともとウォルト・ディズニーは映画の世界の人で、一番古い作品は1937年12月公開の『白雪姫』、最近では2014年3月に国内で公開された『アナと雪の女王』があるが、そのテーマはすべて一貫していて、“正義は悪に勝ち、愛は人を救う”。 

「非常に単純明快だ。このテーマを二次元の世界で描いたのが映画であり、三次元に表わしたのがディズニーランド。だから園内で働くスタッフは、テーマに沿った役割を演じる“キャスト”と呼ばれ、困っているゲストがいたら、すぐに手を差し伸べる。ディズニーの魅力の源泉はここにあるのではないか」 

 またウォルト・ディズニーは、“科学技術が進めば進むほど、人々は孤独になり、分離する”と語ったという。 

「つまり人と人との絆が薄くなっていく。だからウォルトは、人々の心が1つになる場所を作りたいと考えた。ディズニーランドの根底に流れるウォルトのこの思いも、人気の秘密になっているように思う」 

 さらに鎌田氏は、「人は何に感動するのか、ウォルトは知っていた」と続ける。 

「それは純なるもの。年老いた人でも、あるいは悪人であっても、純粋な、無垢な心は持っているはず。それがディズニーのキャラクターのテーマでもある。ウォルトは、私は子供のために映画を作ったのでない、誰もが持つ“子供の心”のために作ったのだ、と言った。人は純粋なものに感動する。ディズニーの作品はすべて、純なるものだ。これも人気の秘密かもしれない」 

ディズニーの唯一のミッションは“We create happiness”

次に鎌田氏は、講演会の会場となった代官山 蔦屋書店にも触れ、ディズニーに共通する要素が数多くあると指摘した。 

「売れている本だけでなく、専門的な書籍もたくさん並んでいる。ディズニーランドも同様のスタンスで、オープンと同時に始まった“空飛ぶダンボ”というアトラクションをいまだに続けている。もっと大きなアトラクションを作ったほうがゲストの数は増えるだろう。でも作らない。これもディズニーの特徴で、この書店もまた非常に奥行きが深い」 

 参考までに、代官山 蔦屋書店にある書籍数は実に約13万冊で、さらに同店はニューヨークのカルチャー系サイト「Flavor Wire」で、“世界でもっとも美しい書店”のトップ20に日本で唯一、選ばれている。 

「今日講演するに当たり、この書店を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブについても色々と調べてきた。そのミッションは非常にシンプルで、“私をおもしろくする会社”。この会社に勤めている人が面白くなれば、お客さんも面白くなるということだろう。ぜひ社長の増田さんと対談して、本にしたい(笑)」 

 代官山 蔦屋書店にはディズニーと共通する部分がたくさんあると語る鎌田氏だが、翻ってディズニーのミッションはただ1つ、“We create happiness”。 

「お客さまを幸せにすること。ディズニーには、そのために様々な職業があり、私がかつて所属していた夜間の清掃部門もその1つだ」

ディズニーに学ぶ、夢を実現する“4つのC” 業務効率化とおもてなしは両立するのか?

夢を実現するためのディズニーの“4つのC”

会場には小学生以下の来場者も見られたが、鎌田氏は大人向けの話として、夢を実現するためのディズニーのキーワード、“4つのC”を紹介した。 

 まず1つめが、Curiosity(=好奇心)だ。 

「これを無くすとアイデアも出てこないし、新しいものも作れない。私はこのCを“野次馬的”好奇心と訳している」 

 2つめが、Confidence(=自信、確信)だ。 

「何かをやろうとする時、ほとんどの経営者は確信など持っていない。できそうな感じがするので、やってみるだけ。私はこれを“根拠のない自信”と訳している」 

 続く3つめが、Courage(=勇気)だ。 

「ウォルトはこれを“当たって砕けろ”と言っている」 

 そして4つめのCが、Constancy(=普遍性)。 

「私は一貫性と捉えている。頑固なまでの一徹心で、こうだと思ったら曲げないこと。この4つがあれば夢は実現し、人生は成功する」 

 鎌田氏はこの話を、今年の企業の新入社員への訓話としても語りたいと笑う。 

「今年の新入社員は、自動ブレーキ型だと言われている。まずいと思ったら、自分で止まってしまう。突き抜けてはいかない。安全な生き方だ。でも今の新入社員に必要なものこそ、この4つのCではないか」 

おもてなしとは、“表裏のない気持ちで見返りを求めない気配り”のこと

海外からの観光客が日本に来て驚くことが3つあるという。 

 1つめが、鉄道の定時性、そして2つめが、2020年夏季オリンピックの招致活動でも大きな話題となった“おもてなしの心”だ。 

 ここで鎌田氏が今回上梓した『ディズニー おもてなしの神様が教えてくれたこと』の中から、おもてなしとサービスの違いについて、簡単に紹介しておこう。 

 まずおもてなしとは、“表裏のない気持ちで見返りを求めない気配り”のこと、一方のサービスは、“相手に気付いてもらうことを前提とした気配り”のことだ。 

「おもてなしの心とは、楚々としていて、これ見よがしではないもの。まさにディズニーの精神に相通じるものだ。しかし外国に行くと、サービスをしたんだからチップを寄こせといわれる(笑)。海外からの観光客が日本のおもてなしの心に驚くのも無理はない」 

 そして3つめが、清潔さ。 

「ディズニーリゾートも非常に清潔だ。ゲストを迎える園内だけでなく、キャストが働くバックステージも同様で、取引業者も驚く。空き缶1つ、ゴミ1つ、落ちていない。人は綺麗にすればするほど、汚さなくなる。これもウォルトの言葉だ」 

効率に優先されるべきは、自社のミッション

講演会終了後には、来場者からの質問コーナーも設けられたが、最後にその中から1つ、紹介しておこう。 

「一般企業では、仕事の効率化とおもてなしは相反する要素だと捉えられがちだが、その点についてどのように考えられているか?」(来場者) 

「ディズニーでも効率を大事にしている。ディズニーリゾートを運営する上での4つのキーワードがあり、1つめが安全性、2つめがゲストへの配慮、3つめがショー、そして4つめに効率が入ってくる。 

 たとえば掃除の人員配置を例に挙げれば、417パターンのシフトがある。同じ5万人の来園者でも、季節によって園内の汚れ方が全く違う。それに合わせて人を配置していく。非常に緻密な計算のもとに運営されている。 

 ただディズニーにとって一番大事なことは“We create happiness”、つまり自分たちのミッションだ。それを犠牲にしてまで、効率を追求してはダメだということ。効率を追求するあまり、自社が大事にしていることを忘れないようにしたほうがいいと思う」(鎌田氏) 

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鎌田氏が手がけたディズニーシリーズ本。合計70万部を突破するベストセラーとなった

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