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ブランデッド・コンテンツの作り方に絶対の正解は存在しない
「ブランデッド・コンテンツ」について語ってきた連載も、今回が最終回です。第1回目では、「ブランデッド・コンテンツ」とはいったい何を指すのかに ついて、紹介しました。簡単に振り返ると、従来の広告という枠を越えて、ブランドの価値を高めるために、ソーシャルで話題化されるバイラル・フィルムでも 良いし、夕方のテレビ・ニュースで取り上げられるイベントを仕掛けることでも良いし、なんらかのコンテンツを企画/制作/実施すること、またはその作品/ 施策です、ということでしたね。そして、第2回目では、「ブランデッド・コンテンツ」が必要とされ注目されるようになった背景に ついて、説明しました。復習すると、デジタル/ソーシャル/モバイルの発達によって、送り手であるメーカーや広告代理店が主導権を握っていた時代は過ぎ去 り、受け手である消費者が“ブランドをコントロール”ようになったのが、主要な背景です。そして、それは消費者が受け取る情報量の爆発的増大(量的側面) と、ブランド・メッセージと消費者の関わり方の特性(質的側面)の2つの側面から分析できることも、お伝えしました。
正直に言えば、絶対の正解は存在しないし、簡単なハウツーもありません。「ブランデッド・コンテンツ」は、映画や動画や記事や小説などとも競争しなければならないコンテンツです。ということは、効果的な「ブランデッド・コンテンツ」つまり魅力的な「ブランデッド・コンテンツ」をつくるということは、大ヒットする映画や小説と同様の才能やスキルや努力が必要になるということでもあります。
しかし、それでもやはり、気を付けるべきポイントは、存在します。筆者は、論文でも既にその点について考察しています。論文での考察をもとにして、これから幾つかのポイントをご紹介して行きましょう。
ブランデッド・コンテンツ制作のヒント
「ブランデッド・コンテンツ」と呼ばれるものの第一の特徴は、従来の広告の枠を越えていることに他なりません。だからこそ、従来の広告の作り方や常識とは、大きく異なるポイントが存在します。ここでは、従来の広告の考え方と対比させる形で、効果的な「ブランデッド・コンテンツ」制作のヒントについて、見て行きましょう。従来の広告では、「どのブランドが、何をメッセージしているのか、明確に伝わることが良い」とされて来ました。しかし、「ブランデッド・コンテンツ」では、「メッセージが明示的に伝わらない=広告らしくない」ことが、返ってプラスの要素となりえます。
伝える視点と受け取ってもらう視点の違い
また、従来の広告では、複数のメディアを活用する場合、ひとつのビジュアル要素(One Look)とひとつのメッセージ(One Voice)が望ましいとされて来ました。いちばん単純なやり方で言えば、テレビCMも新聞広告も駅貼りポスターも、同じタレントの同じ笑顔があり、同じ コピーが同じ書体で書かれている、といったことです。それに対して「ブランデッド・コンテンツ」では、コンセプトあるいはメッセージの中身の統一は必要ですが、一方で接点(メディア)ごとに最適なコンテンツを作り出すことが必要だと考えられます。そして、接点ごとに最適なコンテンツを作り出すためには、はっきりした統一性はむしろマイナスとなるのです。
売上前年比9%アップを記録したブランデッド・コンテンツの成功事例
さて、今回も、具体的な事例をひとつ、ご紹介しましょう。2008年カンヌ国際広告祭フィルム部門グランプリ受賞作で、各方面で物議を醸し出した作品です。テレビCMとしても放映されましたが、充分に「ブランデッド・コンテンツ」と呼んで良い事例です。この商品スローガンが意味するのは、商品パッケージにも描かれているミルクのこと。一杯半たっぷりのミルクを使ったおいしいチョコレートだ、というメッセージのようです。
そして、この事例は、先ほど提示した「ブランデッド・コンテンツ」のポイントを、ことごとく満たしていることに、もう皆さんもお気づきのことと思います。
3回にわたって、「ブランデッド・コンテンツ」についてお伝えしました。「ブランデッド・コンテンツ」の活用は、これからのマーケティング・コミュニケーションにとって、不可欠の要素だと思います。この連載が、皆さんの「ブランデッド・コンテンツ」の理解と制作のヒントに、少しでもなり得たことを切望しています。
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