2013年7月31日水曜日

2400店のドコモショップ抱える強みを生かせるか、「タブレットアラジン」で店舗改革

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130722/493245/?ST=cio&P=1


NTTドコモが、提供するサービスを急拡大させている。モバイルを核とした「総合サービス企業」への転換を急ぐドコモにとって、これから進む道は同社にとって経験のない未知なる領域だ。
 確かにドコモには、総合サービス企業を目指せるだけの大きなポテンシャルがある。通信会社としてスマートフォンを販売し、「ドコモショップ」という店舗網を全国に持っている。その数2400店と、ちょっとしたコンビニ並みの規模だ。スマホと店舗というO2O(オンライン・トゥ・オフライン)のインフラを自前で両方持つことがドコモの強みであり、強力な顧客基盤とともに、この顧客接点を生かすも殺すもドコモ次第となる。
 ドコモは今、野菜に体温計、保険、さらには旅行など、相次いで新商品や新サービスの提供と、そのための企業提携や買収に乗り出している。取り扱うコンテンツの広がりについては、明日の第2回で詳しく述べるが、単なるスマホ通販にとどまらず、2400カ所の店舗網を絡めたリアルビジネスとの相乗効果を最大限に引き出すことで、ネット通販の覇者である楽天やアマゾン・ドット・コムにはない特異なビジネスモデルを構築しようとしている。
 振り返って、ドコモの差異化要因である我々にとっても身近なドコモショップについて見てみると、現状では誰の目にも課題が山積みであることは明らかだ。スマホの機種変更では80~90分待ちが当たり前。家族で訪れると、全員の対応が済むまでに半日がかりになることも珍しくない。貴重な週末が機種変更だけで終わってしまう。それほど混雑が激しい。
写真1●「タブレットアラジン」を持つ「ドコモショップ渋谷店」のスタッフ
 そこにきてドコモは、ドコモショップでスマホ以外に婦人体温計といった健康機器まで扱い出した。ドコモショップのスタッフは、これまで想像もしていなかったであろう“変わった”商材も取り扱っていかなければならなくなった。ドコモ側が何も対策を打たなければ、ドコモショップでの待ち時間はさらに延びるのは必死だ。そして顧客満足度は落ちる。他社スマホへの乗り換えが後を絶たないドコモにとって、既存顧客の満足度を高め、つなぎとめる経営努力が欠かせない。
 ドコモの経営陣が描く総合サービス企業としての「巨大な絵」と、商材の広がりと待ち時間の拡大に疲弊する現場。このギャップをどう埋めていけばよいのだろうか。
 ご存じの通り、ドコモショップを切り盛りするのはドコモの社員ではない。代理店のスタッフたちだ。彼ら彼女らへの支援やサポートが急務になってきている。
 そこでドコモが投入を決めた切り札が「タブレットアラジン」である(写真1


 ドコモの基幹システム「アラジン」の名が付く通り、タブレット端末には顧客サービスに必要な業務システムを搭載している。ドコモショップでカウンターへの案内の順番を待つ顧客の目の前まで基幹システムを“持ち出し”、その場でできることは即対応(写真2)。少しでも待ち時間を減らす。
写真2●「タブレットアラジン」を使った接客風景
 目標は高い。これまで90分近くかかっていた機種変更時間を、3分の1の30分まで短縮する。既に60分まではメドが立ったが、さらに半減となると、ハードルは相当高い。
 タブレットアラジンは先行して一部の店舗で試験導入を開始。ドコモショップの現場を取り仕切る副店長クラスの人たちとドコモが定期的に検討会を開き、使い勝手を向上させてきた代物だ。既に試験店では一定の導入効果が認められたため、2013年8月には全2400店中、1800店への導入を英断した。
 ドコモの岡誠一販売部代理店担当部長は「ドコモショップのオペレーションが劇的に変わることを期待している」と語気を強める。もっとも、試験店を除けば、タブレットアラジンが入り始めるのはこれから。習熟が進むのは、2013年秋以降になるだろう。
 タブレットアラジンの特徴は、店舗のカウンターに顧客を案内する前に、顧客がソファなどに座った状態で、契約内容の確認・変更、サービスの追加や仮登録、料金診断などができることだ(写真3)。つまり、内容によってはカウンターで対応せずに、その場で顧客の要望を解決してしまう。
写真3●「タブレットアラジン」の画面
 スタッフのタブレット操作は基本的に、直感的なものばかり。顧客も自分の契約内容などを理解しやすい。7月初旬に取材に訪れた「ドコモショップ渋谷店」では一足早く、タブレットアラジンを使った接客が始まっていた。
 店舗オペレーションの改革はタブレットアラジンの導入だけにとどまらない。ドコモは商材の拡大を見越して、店内で「体験ゾーン」の確保に乗り出している。順番を待つ間、スマホはもちろん、体温計などドコモが新たに扱い始めた商材を自由に触って試用できるように改装を進めている。
 もっとも、こうなってくるとドコモショップを運営する代理店側には「店舗スタッフの配置をどうするか」という新たな課題が浮上してくる。


 まず、店舗入り口に顧客を出迎えるスタッフを置く。ドコモショップは来店予約も始め、まずここで顧客の予約内容や用件を聞き、応対内容ごとに振り分ける。
 カウンターが混んでいる時はソファや体験ゾーンへの移動を促し、時には顧客の求めに応じてタブレットアラジンでのフロア接客もする。そのためには自由に店内を動き回れるフロアスタッフを最低1人は確保しておかねばならない。カウンター対応も十分ではない現状では、人員がまだまだ足りないのが実情である。
 週末の大混雑は顧客だけでなく、スタッフにとっても大きな負担だ。
 顧客が待ち続けるなかでスタッフはトイレや休憩にもなかなか行けず、モチベーションが下がりかねない。体力的にもきつく、女性スタッフが多いドコモショップでは離職者も少なくない。
 するとオペレーションの習熟が落ちて、新たな人材確保や新人教育にコストがかさむ。商材の拡大は商品知識の習得にも時間を要する。携帯電話だけ扱っていればよかった時代とは、求められる接客スキルのレベルは格段に高まっている。
 こうした現場の対応力強化が、総合サービス企業に生まれ変わりたいドコモの喫緊の課題である。そのためにタブレットアラジンがどこまで力を発揮するのか、注目したい。
 タブレットを販売する企業としての意地もあるはずだ。総合サービス企業への脱皮において、タブレットアラジンで失敗は許されない。

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