2013年7月22日月曜日

海外のソーシャルメディアプロモーション、9つのトレンド

http://marketing.itmedia.co.jp/mm/articles/1301/22/news006.html


2012年、日本でのソーシャルメディアの利用者は、国内インターネット普及人口の半分にあたる5億60万人。20歳から40歳までの世代では、5人に3人が利用している。Webマーケティング研究会では2013年のFacebook利用者が前年比20%増の2000万人に到達すると予想している。
 あるべき姿が固定されている従来の広告手法とは異なり、ソーシャルメディアでの広告手法は発展の余地が大きい。新しいメディアであり、ユーザー側も積極的に参画することができるため、メディア内でのコミュニケーションを変化させることが可能である。よって、この分野での広告手法の発展も目覚ましい。昨日まで効果があったキャンペーンが、明日には時代遅れになっている状況が2013年も続くと考えられる。
 9つのキャンペーンを例にとりながら、各ブランドがソーシャルメディアにどのような役割を担わせ、どのような仕掛けを埋め込み、一体何を成し遂げたのかをご紹介する。

1. Skittles|Mob the Rainbowキャンペーン:参加型イベントで楽しく! 多くの人に! ブランド価値を拡散

 Skittlesは子供から大人まで、多くのファンを獲得している大手キャンディー ブランドである。キャンペーンの実施前ですでに、Facebook上で350万のファンを持ち、スターバックスコーヒー、コカ・コーラに次ぐ世界第3位のポジションを誇っていた。しかし、Skittlesは、最初に「Like!」を押して終わってしまうファンを集めることだけがマーケティング活動として正しいのか、疑問を持った。ブランドとロイヤルファンとのインタラクションがそんな希薄なものでよいのか? その後のブランドへのエンゲージメントに本当につながるのであろうか? ファンの数を競うことだけが正しいのであろうか? そのような疑問に対し、Skittlesは、眠れるファンを覚醒させ、ブランドへのエンゲージメントを最大化するためにMob the Rainbowキャンペーンを実施した。
 Mob the Rainbowキャンペーンは、10種類前後のファン参加型イベントで構成されている。その中の1つ、「バレンタインに日頃の感謝を込めて、みんなが幸せになるSkittlesをプレゼントしよう!」では、普段あまり愛されることのない駐車取締官に、Skittlesをサプライズでプレゼントした。Facebook上でファンからメッセージを受け付け、実際にSkittlesをあげるシーンを撮影、Facebookで発表するというソーシャルメディア版視聴者参加型番組といった感じだ。このキャンペーンには視聴者を企画イベントに参加させながら楽しませ、その中で、Skittlesのブランド価値を拡散させていく仕掛けが盛り込まれている。
 結果的にこのキャンペーンは、ブランドとユーザーとのエンゲージメントの活性化に成功し、ファン数は350万から500万にまで拡大した。

2. RedBull|Felix Baumgartner's jumpキャンペーン:特別な時間とブランド価値を共有

 レッドブルのキャンペーンには目をみはるものがあった。2012年10月14日、レッドブルがスポンサーをつとめたキャンペーンで、スカイダイバー フェリックス・バウムガートナー(Felix Baumgartner)が23マイル上空からフリージャンプを成し遂げたのだ。
 宇宙飛行に匹敵するこの大掛かりなイベントは、ソーシャルメディアで大きな話題をさらった。ダイバーの興奮した精神状態と、レッドブルの商品特性がリンクし、このイベントが、レッドブルのプロダクトイメージを際立たせた。
 ジャンプの瞬間には多くの人々がその状況を見守り、また、ジャンプ後も、話題が話題を呼んで、ビデオは3000万回以上再生されることとなった。
 このジャンプによってレッドブルは“命知らずのスポーツ”と同義的なニュアンスを獲得し、レッドブルの先進性と商品の特性を視聴者に強く印象付けた。エナジードリンクが乱立する現在、レッドブルのソーシャルブランディングは成功したといえよう。

3. Ben & Jerry's|euphoriaキャンペーン:ブランドがもたらす情緒的価値の拡散

 Ben & Jerry'sのソーシャルメディアの利用目的は、「自社製品であるアイスクリームがもたらす、美味しく、この上ない幸せな気分を、ソーシャルメディアを利用しているターゲットに想起させ、話題にしてもらい、売り上げにつなげる」ということだ。
 Ben & Jerry'sのキャンペーンの注目点は、企業の取り組みながら、商業臭さを抑え、ユーザーの参加数を高めることに工夫を凝らした点だろう。
 企業側はできるだけ企業のブランドや商品を露出したいという欲求があるが、あまりにも商業臭が強いとソーシャルメディアでは毛嫌いされてしまう。
 Ben & Jerry'sは、「Ben & Jerry'sのアイスクリームを食べて幸せな瞬間を投稿する」という企画ではなく、多幸感という感情に着目し、このキーワードにまつわる瞬間を投稿するキャンペーンを展開することとした。
 これであれば、Ben & Jerry'sアイスクリームだけにとらわれず、より身近で、投稿されやすいトピックとなり、かつ、Ben & Jerry'sのアイスクリームの価値を軸に、Buzzが展開する、世俗的な話題性と商業的なブランドメッセージとのバランス感覚に優れた企画だ。
 また、このキャンペーンでは参加率を高めるため、選考された写真はBen & Jerry's の広告に採用されるという特典を提供し、参加者のモチベーションを高める仕掛けも設けた。結果、1億ページビューが達成され、このキャンペーンに費やした費用と反響を勘案するに、費用対効果の観点で、極めて優れたキャンペーンとなった。


4. Ford Explorer:ソーシャルメディアをフルモデルチェンジ発表の場として活用

 2011年フォード・エクスプローラーはメジャーモデルチェンジを実施した。従来、フォードでは、ソーシャルメディアがモーターショーを補完するメディアとしてその役割を担っていた。モーターショーへの誘導や訪れた人へのフォローアップ、もしくは、行けなかった人へのレポートが主な役割だったのだ。
 しかし、フォードは、ソーシャルメディアのキャンペーンにおける位置付けを大きく変換する。ソーシャルメディアは、モーターショーに行けない人でも、バーチャル空間で参加できるという特性を持つ。また、コアなファンからの情報発信媒体としても際立った強みがある。そうしたソーシャルメディアの利点に注目し、Facebookを新作発表における最も重要なチャネルと位置付けた。
 フォードではオンラインでのイベントを強化し、モーターショーに参加できない人でも、その場にいるような臨場感が体験できる感覚の釀成を狙った。集客でもFacebookを利用した。そして大掛かりなキャンペーンをペイドメディアで展開し、発表日までには、500万のターゲットへリーチすることができた。
 ペイドメディア上の広告には技術的に最新の手法を取り入れた。バナー広告自体にFacebookの「Like!」ボタンを埋め込み、Facebookへのトラフィックの増加を図った。フォードのマーケティング責任者は以下のように語る。「Facebookを主体とした大掛かりなキャンペーンは初めての取り組みだったため、費用対効果の点でリスクが大きかったが、トラフィック、リーチ数、および、実際の売り上げを勘案すると、キャンペーンは大きな成功を納めたといっていい」
 フォード・エクスプローラーの第2四半期の売り上げ総額は26億ドルを超えた。

5. Bitsa Wispa |Dairy Milk Bubbly barキャンペーン:ソーシャルメディアで人に伝えたくなる仕掛けを

 Bitsa Wispaは、Facebookですでに180万のファンを獲得していた。ファンはBitsa Wispaのお菓子への愛を語り合う巨大なコミュニティを形成していた。
 ファン獲得までの流れは以下のようなものだった。新製品が発表され、最初に購入した消費者がFacebookでシェアし、購入していないファンが投稿を見て新製品を確認、ファンコミュニティ内でシェアされると口コミが発生し、他のファンを獲得していく。
 しかし、この口コミは、ブランド側が自ら起こせるものでなく、ファンの中から自発的にわいて出てくるのを待たなければならないという受動的なものだった。また、車などと違い、頻繁に語られることのない商品カテゴリーであったため、人に語りたくなるような仕掛け作りが求められていた。
 このような背景もあり、Bitsa Wispaは従来の新商品発表のキャンペーン構造を見直し、ソーシャルメディアの特性を最大限に活かした形へと変えた。それが、Bitsa Wispaの新商品であるDairy Milk Bubbly barキャンペーンだ。
 Dairy Milk Bubbly barキャンペーンでは、新商品告知を企業に代わってFacebookのファンに代行してもらうという方法を採用した。つまり、人に伝えたくなる話のタネを仕掛け、意図的に口コミを起こすことを狙ったのだ。いまだ市場に出回ってない新製品を、選ばれたFacebookのファンだけが先行して手に入れられ、それをFacebookで自慢できるのである。
 このキャンペーンの目的は、新商品の価値を多くの人に正しく伝え、好感を持ってもらうこと。同時に、ソーシャルメディアの活用メリットである“リーチへの費用対効果の最大化”も狙った。

6. Heinz|Tomato Ketchup blended with Balsamic Vinegarキャンペーン:ソーシャルメディアで人に伝えたくなる仕掛けを

Heinz社もBitsa Wispaと同じ手法を採用した。 
新商品である「Tomato Ketchup blended with Balsamic Vinegar」を1カ月前に購入できる特権をFacebookのファンに提供した。キャンペーン期間中に、世界規模で2600万人へリーチし、Facebookへの書き込みが650%増加した。同社の年間売り上げ目標が100万本であるから、この2600万という数字は驚異的な成功といえよう。

7. Burberryの香水の新製品発表:ロイヤルティの高いお客さまを優先

 バーバリーもキャンペーンにソーシャルメディアを活用している。
 2012年9月に、バーバリー ボディ フレグランスの新製品をFacebookで発表した。Facebookの760万人(当時)のファンに2万5000個のサンプル配布した。それがきっかけでFacebookのファンが40%増加した(2013年1月現在1470万人)。

ソーシャルメディアとロイヤルティマーケティング

 ソーシャルメディアを活用した同じ種類のキャンペーン手法を3つ紹介したが、この手法はご存知の通り、ソーシャルメディアから始まった手法ではない。オートクチュールや宝石などは、必ずロイヤルカスタマー向けのショーや販売会が開かれ、「お得意さま」(=ロイヤルカスタマー)にまずはよい商品を紹介するという手法をとる。「お得意さま」の多くがブランドの潜在顧客層に影響力のある人たちであり、その周りにいるフォロワーが彼らと同じ物に興味を抱くことで、商品の評判が拡散していくという構造である。
 なぜ、2012年になって、ソーシャルメディアを活用したこの手のキャンペーン手法が多く現れたのか? 旧来の手法では、店頭でお得意さまの連絡先を聞き出し、後日、ブランド側から特別の催し会に招待するといういくつものプロセスを踏まなければならないばかりではなく、それができる商品カテゴリーが限定的だった。つまり、キャンディーやアイスクリーム、香水など、「お得意さま」を特定しにくく、「お得意さま」だけへの特別な催し会を実施しにくいカテゴリーにとっていわゆる「ロイヤルティマーケティング」は机上の空論だった。しかし、ソーシャルメディアはそうした商品カテゴリーのお得意さまとも関係を結ぶことができ、また、企業から、つまり、ブランドから直接語りかけ、時には、特別な催し会を実施することを可能にしたのである。
 メディアの特性、ブランドのビジネス課題、ユーザーの関心事などを織り交ぜて考察していけば、2013年はまた新たなステージでソーシャルメディアを活用した新商品発表キャンペーン(ロイヤルティキャンペーン)や手法が生まれてくるのではないだろうか。

8. Bodyform|Facebookでのブランドへの質問対応:ソーシャルメディアで真の対話が生まれる

 生理用ナプキンのメーカーであるBodyformのFacebookにあるユーザーがこんなことを書き込んだ。
 「Bodyformは嘘をついているから謝罪してほしい。CMでは青色の水だったが、生理の血は青ではなかった。Bodyformのナプキンをしたら、憂鬱な気分がふっとび、いろいろなアクティビティが楽しめるかのようなCMを展開しているが、実際はそうではなかった」
 それに対し、BodyformのCEOは(Bodyformの)CMの内容は嘘だった、とユーモアたっぷりにFacebookのビデオで謝罪した。
 これが話題となった。理屈にもならないようなクレームであり、通常はスルーされるような内容であったが、こうしたことに真摯に対応する企業姿勢もさることながら、受け答えが上品で、かつ、ユーモアのセンスに富み、それがブランドへの好感度が増す内容であったからだ。
 この件は特殊な例かもしれない。しかし、ブランドとユーザーの対話がさらに活発になるプラットフォームが技術的、社会環境的に揃いつつあることは事実だ。またソーシャルメディアの特色として、「一個人対ブランド」という従来型の閉じたコミュニケーション構造にコミュニティが接続され、そのやりとりを見守るという新たな構造がソーシャルメディアの普及で整いつつある。
 一ユーザーからのレスポンスがたとえクレームであったとしても、企業としての対応の仕方によっては売り上げを伸ばせるよい例だろう。このBodyformの動画の再生回数はすでに300万回を超えている。Bodyformの対応は話題となり、ファンを増やすことになった。
 2013年には、ブランドと顧客との対話の機会がさらに増えると予想される。多少、大袈裟に表現するならば、顧客との対話の一言一句が、広告のキャッチコピーを作る時と同じぐらいの重要性を持つことになるだろう。ソーシャルメディアに対し、企業はあらゆる事象を想定し、常に最適な対応を心掛けなければならない

9. McDonald Canada|yourquestionsキャンペーン:対話形式によるキャンペーン

 マクドナルド カナダは、マクドナルドへの疑問や質問を気軽にできるキャンペーンを実施した。結果はポジティブなレビューが集まり、このパブリシティは大きな成功を収めた。
 消費者は自身が口にする食物を盲目的に受け入れることはない。常に疑問を抱き、答えを求め、納得したいと考えている。このインサイトに正面から向き合おうと取り組み始めたキャンペーンだった。
 マクドナルドへの疑問や神話、誤報、うわさに答えるという方法をとっているが、ダイレクトに表現すると、マクドナルドに対するネガティブイメージの払拭を目的に企画されたキャンペーンであると考えられる。
 例えば、フレンチフライに対しての質問では、農場での収穫から料理までの行程をビデオでレポートしている。ネガティブイメージの払拭だけでなく、フレンチフライに対する親和性の醸成という意味でも効果が期待できる内容となっている。現在では1万4000件の質問が寄せられており、すでに7000件に対しては回答をしている。
 他国でも同じコンセプトでのキャンペーン展開を計画中。
 このキャンペーンが売り上げにどのように貢献したのかは公表されていないが、ネガティブイメージの払拭を映像の拡散で実現できたということだけでも、同社にとっては意義あるキャンペーンだったといえるだろう。

2013年、ソーシャルメディアをどう活用すべきか?

 ソーシャルメディアをキャンペーンにどう活用すべきか? 事業課題の何をソーシャルメディアが解決するのか? このような疑問を掘り下げながらキャンペーンを企画していけば、2012年の成功事例から導かれるヒントと共に、何をすべきかのブループリントが浮かび上がってくるだろう。単にソーシャルメディアの大きなうねりに乗るだけではなく、2013年はみなさん自身でトレンドを作ってもらいたい。

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