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エージェンシー・オブ・ザ・イヤーに選出された「コンシューマー」
アメリカの有名な広告業界誌の一つに 「Advertising Age」があります。この業界誌では、毎年、前年に一番活躍した広告代理店を“エージェンシー・オブ・ザ・イヤー”として選出、表彰しています。JWT、 BBDO、DDB、ワイデン&ケネディなどと言った有名広告代理店が、その活躍具合を競うわけです。この年あたりから、消費者自らが創り手/送り手となるCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)やUGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)の台頭が大きな話題となっていました。
受賞理由の中でも、「マーケティング界のリーダーたちは、コントロールすることをあきらめ、いまやコンシューマーたちが彼らのブランドをコントロールしていることを受け入れている」と述べられています。
広告を無視することで、消費者はブランドをコントロールする力を得た
では、なぜ、「受け手がブランドをコントロール」するようになったのでしょうか?それは、インターネットの発展、それに続くソーシャル・メディアの勃興、進展するモバイル・シフトによる、消費者やコミュニケーションの変化の影響に他なりません。そして、その影響は大きく分けて、2つの点が考えらます。ひとつは、消費者が受け取る情報量の爆発的増大(量的側面)で、もうひとつは、ブランド・メッセージと消費者の関わり方の特性(質的側面)です。
量的変化についてよく引き合いに出されるのは、総務省による「情報流通センサス調査」です。例えば平成17年度の調査では、この経緯を“情報爆発”と呼 び、量的変化の甚大さについて述べています。この調査によると、1995年に比べると10年後の2005年には、消費者を取り巻く情報量(選択可能情報 量)が実に410倍に増加している、というのです。そして、実際に利用されている情報量(消費情報量)も13倍に増加しています。
コンテンツを見るか否か、それは消費者が決める
もうひとつは、この時代の、ブランド・メッセージと消費者の関わり方の変化(質的側面)です。たとえば、自社Webサイト上のコンテンツと、従来のいわゆる広告との違いについて、考えてみましょう。自社Webサイトの、メディアとしての特徴は、どんなことでしょうか?
メディアとしての自社Webサイトは、1点を除いては、ブランド・メッセージを伝えるものとして完璧な媒体です。そこには、時間的空間的制約はなく、制作費を除けば、媒体費の制約もありません。では、完璧ではないただ1点とは、何でしょう?それは、たとえどれだけ有意義な情報であろうとも、誰も消費者まで運んでくれない、ということです。テレビやラジオの電波のように、もしくは新聞の配達員のように、誰も家庭まで届けてくれません。
ブランド・メッセージはコンテンツにならざるを得ない
さらに、従来の広告メディアと自社Webサイトが、決定的に異なる点があります。人々は、有用だったり楽しませてくれたりする番組や記事を見るために、テレビを見たり新聞を読みます。広告はメディア費を払って、そこに載せてもらう(便乗させてもらう)わけです。だから、自社Webサイトなどネット上を主な舞台とするブランド・メッセージは、テレビ番組や新聞記事と同じ意味合いでの“コンテンツ”にならざるを得ないのです。ここに、ブランデッド・コンテンツが隆盛する背景があります。
消費者がわざわざ見に来るコンテンツとは?
さて、少し理屈っぽい話が続いてしまいました。せっかくなので、ここで、僕が大好きな、そして、ブランデッド・コンテンツの草分けと言える名作を、ご紹介しましょう。そして、撮影手法についても、CGを使っているのか、まさか本当にボールを落としたわけではないよね、などの噂を醸成しました。メイキングも公開し、そこ には、何十万個というスーパーボールをサンフランシスコの坂にバズーカ砲のようなもので落とし、機動隊が持つような透明な盾で自らの身を守りながら撮影に 臨むクルーが映し出されています。
噂が噂を呼び、ユーチューブでも、当時の作品としては記録的な視聴回数を達成しています。これだけの魅力のあるコンテンツであれば、人々は、わざわざ「見に来る」のです。当時、そんなことに気付かされた1本でした。
一大勢力となりつつあるブランデッド・コンテンツ的なもの
こんな風に、インターネットの発達、さらにはソーシャル・メディアやモバイル・シフトなどの要素が加わって、ブランデッド・コンテンツ的な作品/施策は、広告界/マーケティング界において、一大勢力とも言える存在になっていきます。次回は、ブランデッド・コンテンツの特徴を、従来の広告との相違に注目してひも解いていきたいと思います。また、そうすることで、「有効なブランデッド・コンテンツ制作のためのヒント」にまで迫ってみたいとも考えています。こちらも、どうぞご期待ください。
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