2013年1月4日金曜日

スマートフォン普及後をめざし、総合サービス企業化を加速する――NTTドコモ 加藤薫社長に聞く

■ 結局iPhoneいくのかな?く気がする。下記にそんな一文があります。 (担当:i)


スマートフォン普及後をめざし、総合サービス企業化を加速する――NTTドコモ 加藤薫社長に聞く

マートフォンの本格普及も進み、プロダクトやサービスの面でさまざまな進化があった2012年。スマートフォン移行の需要獲得を契機とした、各キャリア間の競争が激しさを増したことも記憶に新しい。

NTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏
 NTTドコモに限ってみれば、昨年が「苦しい一年」だったことは否めないだろう。2012年前半にはspモードを中心としたネットワークトラブルに見舞われ、後半はAppleの「iPhone 5」によってMNPでの苦戦・純減に苦しめられた。ドコモのLTEサービス「Xi」の堅調な利用者増や、下り最大100Mbpsでの高速化サービス開始など明るいニュースもあったが、ドコモを取りまく環境は逆風だったといえる。
 そして、年が明けて2013年。
 スマートフォン普及“後”の市場が見え始めた中で、業界最大手のNTTドコモはどのような舵取りを行うのか。今回は新春特別インタビューとして、NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏に話を聞く。

「ドコモならではのサービス」を市場競争の争点にする

――(聞き手 : 神尾寿) 2012年を振り返りますと、10月以降の秋冬商戦でドコモがMNPで苦戦しているというのが印象的でした。2013年はまず目下の市場で競争力をどう立て直すかというかが課題になっています。
加藤薫氏(以下加藤氏) 確かに(昨年)10月と11月はMNPで苦戦しました。特に11月はドコモにとって7年ぶりの純減になってしまいました。楽観できる市場環境ではない、と認識しています。しかし、その一方で、12月に我々の新商品が出そろってきまして、そこでの手応えはよいと感じています。(競争力は)回復傾向にある、と感じています。
―― 全体的な競争力の立て直しをどう行うか。この部分での戦略はどのようなものになるのでしょうか。
加藤氏 現状を細かく分析しますと、ドコモの新規純増数の部分は11月・12月と堅調に獲得できていまして、(純新規契約の市場では)売り負けてはいないと考えています。しかし、MNPでの流出が少し多いということで、結果として苦戦しました。ただし、MNPの流出に関しても改善傾向にはなってきています。
 端末の機能・性能はずいぶんと上がってきていますから、それがお客様にも理解され始めています。一方で、ドコモのクラウドサービスの準備も整い、(市場に訴求する)地歩が固まってきています。12月には「dショッピング」もスタートし、デジタルコンテンツからリアルサービスまで幅広くドコモのサービスを展開できる下地ができました。ドコモとしては、端末・ネットワーク・クラウドサービスの連携・調和が着実に進んできていますので、ここをきっちりと訴求していくという戦略になります。
――  なるほど。確かにこの冬商戦モデルはAndroidスマートフォンの安定性・完成度も高くなり、一方で、「しゃべってコンシェル」や「dマーケットVIDEOストア」「dマーケットアニメストア」といったドコモ独自のコンテンツ/サービスの魅力も増してきています。
加藤氏 dマーケットVIDEOストアは、すでに330万契約まできました。コンテンツサービスへの取り組みは、なかなかのものだと自負しています。スマートフォン向けのコンテンツやサービスは堅調に伸びていますので、ここは(競争力立て直しの)訴求ポイントになるでしょう。ドコモは今後、総合サービス企業を目指すという方針を打ち出していますが、その進展には手応えを感じています。
―― ドコモのコンテンツ/サービスはかなり充実してきていますが、春商戦に向けて新たな展開などあるのでしょうか。
加藤氏 これは春商戦にターゲットを絞った話ではありませんが、VIDEOストアをはじめとするエンターテインメントコンテンツ、dショッピングなどのリアルサービスときましたので、来春からはヘルスケアへの取り組みを形にしていきます。健康というキーワードを中心に置きながら、新たなサービス展開をしていきます。例えば、「らでぃっしゅぼーやをなぜドコモが買収したのか」といった問いへの答えも出てくると思います(笑)
―― 2012年までの春商戦はプロダクト先行での競争でしたが、2013年の春商戦ではコンテンツサービスも新たな争点になっていく、という見方でしょうか。
加藤氏 “ドコモならではのサービス”が前面に出ていく形にしたいと考えています。

ドコモサービスのマルチキャリア化とユーザー導線の再設計

―― 昨年からドコモは「サービサー化を進める」という経営戦略を採っていますが、これは2013年になってさらに加速するのでしょうか。
加藤氏 当然それは進めていきます。すでに2012年の段階で土台ができてきていますし、手応えも感じています。
―― そこで注目しているのが、こうした“サービサーとしてのドコモ”におけるマルチプラットフォーム/マルチキャリア戦略です。2012年に投入された「dゲーム」では、ドコモとしては初めてAndroidだけでなくiOSをサポートし、ドコモユーザー以外も利用できるようになりました。今後、ドコモのコンテンツ事業やサービス事業において、このようなオープン化は進んでいくのでしょうか。
加藤氏 まずドコモ(回線)のお客様がメインであることは変わりませんが、今後は他キャリアのお客様やPCユーザーの皆様にも、ドコモのコンテンツや各種サービスをお使いいただけるようにしていきたいと考えています。APIの開放や(他社との)連携スキームの構築をどうするかといった部分も含めて、戦略的にオープン化は行っていきたいですね。
―― 今回はdゲームというソーシャルゲームから始まりましたが、今後はdマーケットVIDEOストアやアニメストア、さらにはドコモクラウドの根幹であるメールサービスなども、マルチプラットフォーム/マルチキャリア化の対象になっていくのでしょうか。
加藤氏 そうですね。そして、その時に大事なのが「docomo ID」です。(ドコモの)メールがポータビリティを持った時にどういう意味になるのか。GoogleのGmailのような位置づけになれれば、それはそれでいいことだと思うのですけれども、これは一足飛びにはいかないと思います。しかし、いずれにせよ、ドコモの上位レイヤーであるサービスはオープン化の方向に進んでいきます。
―― そういった上位レイヤーでの競争では、他キャリアとは別の競合相手も出てきますね。そこでドコモの優位性・競争力をどこに据えていくのかが重要になります。
加藤氏 品ぞろえや(グローバルでの)顧客規模では、GoogleやApple、Amazonといった企業に有利な部分があります。一方でドコモには、リアルなお客様との接点があり、(お客様との間に)積み上げられてきた信頼があります。「ドコモが提供するから」という安心・安全の部分が、我々の優位性になると考えています。特にドコモのお客様に対しては、ドコモブランドの信頼感が訴求力になるでしょう。
―― eコマースに関して見ても、Amazonや楽天は信用できない、インターネットでクレジットカードを使うのは不安という層が少なからずいます。ITリテラシーの高い人があたりまえに利用しているサービスに対して、警戒感や不安感を持つ人はかなり多い。そこにドコモという“顔が見えるブランド”の安心感はありますね。
加藤氏 その手応えはすでに感じています。例えば、dマーケットVIDEOストアですが、ネット上には類似の(映像配信)サービスはいくつもある中で、後発でも我々のVIDEOストアが伸びている。それはなぜかというと、ネット上に数多あるサービスから自分に合ったものや信頼できるサービスをきちんと探し出せる人ばかりではない、ということなんです。そのような中で、ドコモがサービスを用意し、ドコモショップなどのリアル店舗を通じて対面でお勧めしていく強みがあるのです。
―― 確かに、豊富な選択肢から自分にあったものを細かく選択していく自由を求める人がいる一方で、面倒だから自分にあったものをリコメンドしてほしいという人も少なくありません。
加藤氏 おっしゃるとおりですね。自由というものが、不自由につながることもあるのです。お客様の選択肢を豊富にするのは大切だと思いますが、これからはお客様が求めるものを選びやすいようにしてリコメンドしていくことが重要になっていくでしょう。
―― ドコモの経営にとってコンテンツや(eコマースなどの)各種サービスが重要になればなるほど、ストアのUI、とりわけユーザー導線の設計をどうするかが重要になります。AppleやGoogleなど他社のストアを見ても、このユーザー導線の部分は課題や問題点がとても大きい。
加藤氏 そのとおりです。ストアのUIやユーザー導線の再設計は、今後積極的に行っていきたいと考えています。その中でも我々が重視しているのが、「しゃべってコンシェル」に代表されるエージェント機能です。非常に曖昧な条件で、友達に尋ねるように(自然言語で)ニーズを伝えて的確なコンテンツやサービスが答えとして提示されるようにしていきたい。ここは継続的に研究開発やノウハウの蓄積を行っていきます。

端末ラインアップは「選択と集中」で絞り込む

―― コンテンツ/サービス分野への取り組みが強化される中で、2013年のドコモの端末ラインアップの戦略はどのように変化していくのでしょうか。
加藤氏 まず、ドコモとして「Androidスマートフォンが主軸である」という方針は変わりません。その上で端末ラインアップがどうなるかと言いますと、モデル数がむやみやたらと20機種近くもあるといった状況は改めます。モデル数を絞り込み、明確なセグメント化をしていく。
―― ラインアップの「選択と集中」ですね。その時の規模感としては、どのくらいのものになるのでしょうか。
加藤氏 あまり厳密には言えませんが、スマートフォンとタブレットなどを合わせて10〜15機種くらいのイメージでしょうか。また商戦期に対する考え方も、戦略的に見ていかなければならないでしょう。
―― 個人的には、1年を待たずに同じメーカーから似たようなコンセプトのモデルがどんどん出てくるのはよい傾向ではないと考えています。ケースを始めとする周辺機器市場のことを考えても、新機種が発売されたら1年間は市場で陳腐化しないようにすることが重要ですね。
加藤氏 私も同感ですね。半年ごとに目先が変わっていくというのもいいのですけれども、それが負担となるデメリットもあります。AndroidのOSや各種デバイスの進化のスピードと、市場側やお客様に求められるスピードのバランスはよく見ていかなければなりません。
―― これは毎年の新春インタビューで伺っているのですが、歴史的に見てドコモは1つのOSプラットフォームに依存しすぎないことをポリシーにしていました。しかしスマートフォン時代になって、ドコモは事実上のAndroid依存状況になっている。そうしますとAndroid vs. iOSのような市場トレンドの変化の影響を受けたり、OS側のリスクがキャリアとしてのドコモのリスクにもつながるような状況になってしまう。ドコモが事実上のAndroid依存状態にあることについて、加藤社長はどうお考えですか。
加藤氏 (スマートフォンの)黎明期・立ち上がり期においては、Androidに集中して投資していくという方針は間違っていなかったと思います。しかし、1つのOSプラットフォームに依存するリスクは承知していますので、我々のビジネスモデルを展開しやすいOSであれば新たに採用することは十分に考えられます。
 といいますか、それは「iPhoneをいれますか?」と聞いてますよね(笑)
―― ええ(笑) それでは、ずばり伺いましょうか。ドコモは今、iPhoneについてどう考えていますか。
加藤氏 (ドコモとAppleの)どちらにも条件がありますから、具体的にどうなるかは言えません。しかし、iPhoneは魅力的な端末だと思いますし、海外だけでなく日本でも(スマートフォン市場で)大きな実績を残しています。ドコモ側の立場では、ラインアップの中にiPhoneを持つという選択肢はあると考えています。
 また、ここで1つ申し上げたいのは、我々は「iPhoneは扱わない」とは言っていないということです。魅力的な端末ですし、私の頭の中にはいつも(iPhoneのことが)あります。

Xiの投資計画は前倒し 積極的な優位性の訴求も行う

―― 2012年は「LTE」が1つの争点になりましたが、ここでドコモの「Xi」はさまざまな形で先行者優位性があるにも関わらず、それがうまく訴求できていない印象を受けました。
加藤氏 それは私どもも認識しています。ドコモとしては真摯に実直にLTEインフラの構築とサービスの拡大に努めてきましたが、その訴求が「少しお上品すぎるのではないか」という指摘も一部からいただいています。これがJ.D. パワー アジア・パシフィック「2012年日本携帯電話サービス顧客満足度調査」で足を引っ張った部分もあります。ですから今年は、Xiの優位性や強みはきちんとお伝えしていきたい。
―― 2013年には顧客満足度No.1の座を奪還する、と?
加藤氏 Xiの部分がすべてではありませんし、顧客満足度No.1を獲得することが目的になってはならないとは考えています。しかし2012年の顧客満足度調査でNo.1が取れなかったことは事実ですので、社内に私が直轄するプロジェクトチームを立ち上げました。Xiの訴求のみにかかわらず、顧客満足度を回復する取り組みは真剣に行っていきます。
―― 今後のLTEへの投資は計画通り行っていくのでしょうか。
加藤氏 いいえ。計画はできるだけ前倒しします。設備投資の総額自体を青天井にするつもりはありませんが、実施計画の中身についてはより最適化し、前倒しできるところは前倒ししていきます。人口カバー率だけ見ても以前の計画より前倒しで拡大が続いていますし、こうした姿勢は2013年も変わらず続けていきます。

ユーザーとコミュニケーションするドコモを目指す

―― 加藤社長にとって2012年は「社長就任の年」だったわけですが、昨年を振り返って、どのような印象や評価を持たれていますか。
加藤氏 そうですね。ドコモのクラウド系サービスが出そろってきたことは評価しています。ここは2013年はもっとスピードアップしてやっていきたい。
 一方で、2012年にちょっと辛かったのは、やはりネットワーク障害ですね。これが立て続けに起きてしまいました。ネットワーク障害が起きると、いくら端末やコンテンツ、クラウドサービスでよい取り組みをしていてもご破算になってしまいます。昨年の反省を踏まえて、ネットワーク障害への対策はしっかりやっていきたいと思っています。
―― それを踏まえて、2013年の抱負をお聞かせください。
加藤氏 私は社長就任の際に「七分でよしとせよ」と、スピード重視の経営方針を掲げました。これは2013年も継続していきます。特にサービスの部分はスピーディーに取り組んでいきたい。
 2013年、ドコモはお客様の生活に役立つサービスをどんどん投入していきます。まずはそこに期待していただきたいですし、もし完成度が低い部分がありましたら、ぜひ皆様からご意見やお叱りの言葉をいただきたい。ユーザーの皆様とコミュニケーションするドコモになっていければと考えています。

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