2013年1月28日月曜日

“通る企画書”作りの基本/上司を説得できる企画資料の作り方講座#1


■ふむふむ。。。

“通る企画書”作りの基本/上司を説得できる企画資料の作り方講座#1

この記事を読むのにかかる時間: 約 6 分
上司を説得できる企画資料の作り方講座
上司を説得できる企画資料の作り方講座
新入社員が覚えておくと仕事がうまくいく“通る企画書”の作り方
この連載を始めるにあたって、「企画」とは何で、どういった「企画」が良い企画なのかを、「上司を説得できる企画資料の作り方講座」全体の解説ページにまとめてある。まず、そちらをご覧いただきたい。
リンクをクリックするのが面倒な方のためにざっくり要約すると、「良い企画とは実現まで至ったもののことであり、上司がOKを出してくれずに実現できなかった企画は、企画書がいくらきれいに作り込まれていても、その時点では良い企画だとはいえない」ということだ。
では、どうやったら上司を説得して実現まで至らせられる企画書が作れるかの第1回講座をお届けする。

ダメな企画書の例

まず、私が上司ならばOKを出さないだろう、「ダメな企画書」の例を示そう(図1)。ウェブサイトリニューアルについての資料の一部を抜粋したものだ。
図1 ダメな企画書の例—なにが悪いのだろうか?
図1 ダメな企画書の例—なにが悪いのだろうか?(画像をクリックで拡大)
一見、魅力的な企画だと考える人もいるだろう。この企画書はなぜダメなのか、考えてみてほしい。
この企画書のダメなポイントを解説する前に、企画書作りの基本を解説しよう。

だれに提案してだれがOKを出す企画なのか

企画を考える前にまず必要なのは、だれに対して企画提案を行い、その企画をだれが承認するか正確に把握することだ。
たとえば、あなたの直属の上司が課長であり、最終承認者が部長ならば、まずそれを確認する。そして直属の上司である課長のミッションを書き出してみる。たとえば、課長が週1回、アクセス数や週次のECサイトの売上、加えて、ウェブサイトの現状や競合の状況を部長に対して定例で報告している場合は下記のようになる。
課長のミッション:
  • ウェブサイトへの集客と売上アップ
  • ウェブサイトの有効活用方法模索・提案
あなたが考案している企画がある場合、その企画が上司のミッションとどう関わりがあるかをまず考え、あなたの提案によって上司のミッションが実現可能かどうかを考える必要がある。自分の感覚でウェブサイトリニューアルが必要だと考えても、リニューアル後に集客や売上アップにつながらないと思える企画ならば、上司がその企画を通す可能性は限りなく少なくなる。
上司がどういう課題を抱えていて、どういうミッションを与えられ、今後どうしていきたいかなどを知ることは、企画提案に際しては非常に重要なことになる。まずは提案相手について知ろう。直属の上司が社長だとしても同じことだ。

現状把握は必ず行う(現状分析)

どんな企画を行う場合でも、現状把握は必ず必要となる。場合によっては「背景」として今の市場の動向などを知ることが必要な場合もある。
ウェブサイトのリニューアル、ウェブプロモーション実施、CMS導入、グループウェア導入など、どんな企画提案の場合でも同じだ。まず、現状がどうなっているかを把握して、それを書く。
たとえば、ウェブサイトのリニューアルならば、現状のアクセス状況やウェブサイトでのコンバージョン(資料請求、問い合わせ、売り上げなどの最終的な結果)の状況、必要であれば、競合サイトの状況などがいいだろう。
ウェブプロモーションならば、現在行っているプロモーションの状況と結果(行っていないのであれば、競合会社が行っているプロモーションの詳細内容など)などがいいだろう。
企画提案に関連があると思われる現状の状況を、まず書き出してみよう。

分析には必ず数値データを入れる(数値情報入手)

現状分析において非常に重要なことがある。それは、できる限り数値的な情報を入手することだ。
たとえば、ウェブサイトのリニューアルやウェブプロモーションの企画ならば、次のような数値情報が考えられるだろう。
  • アクセス解析の数値データ
  • 月ごとのコンバージョンの数や率(コンバージョンの数や率はサイトの全体来訪者から見たものだけではなく、メルマガなどを行っているのであればメルマガ配信時の際のコンバージョン数や率)
  • 媒体ごとにプロモーションを行った時期、アクセス数、コンバージョン数や率
  • 競合サイトの売上(これは無理な場合も多いが、競合会社が上場企業の場合は、決算書関連の資料を見ることで把握できる場合もある)
  • 競合サイトの商品やサービスの数
また、『インターネット白書』やウェブ上で公開されている調査データなども活用するといいだろう。業界全体の規模、売上推移、商品販売台数、業界の売上シェアなど、関連する数値データは探せばいくらでも出てくる。
こうした数値データは、上司を説得するための資料作り非常に役に立つ。分析や使い方さえ間違えなければ、立派な企画立案の根拠として最も重要な要素となる。
また、入手した数値データをじっくり見ることで、新たな課題の発見やソリューションのヒントが浮き出てくる場合も多いため、数値データの入手は徹底的にやってほしい。

ROIを知る(常にROIの視点で)

「ROI」という言葉をご存知だろうか。Return On Investmentの略で、日本語で言うと「費用対効果」のことである。上司を説得する場合には、この「ROIの視点」が生死を分けると言っても言い過ぎではないのだが、「ROIの視点」を常に持って企画書を作成している人には、私はあまりお目にかからない。
簡単な例で「ROI」を説明してみよう。
1,000円で仕入れた商品を2,000円でウェブサイト上で販売しているとする。粗利は1,000円だ(説明が複雑になるのでこの場合決済手数料や郵送費などは考慮しない)。
広告やメルマガなどのプロモーションを一切やらなくとも月に平均100個売れている。単純に考えて、粗利は月平均10万円となる。
ある月に20万円のバナー広告を出した。その月の販売が250個となり、粗利が25万円となった。
このバナー広告の出稿は、ROIがとれているだろうか。答えはNOだ。
今回バナー広告の粗利への効果は、何もせずとも得られる10万円を差し引いた15万円となる。20万円を出費して、15万円しか儲からなかったのだ。要するにバナー広告をやったことで5万円が消えたことになり、「やらなかった方がよかった」とう結果になる。
「バナーによって商品が露出されブランディングの効果が出ているではないか」という反論もあるだろう。しかし、それならば最初から5万円分のブランディングの企画を作るべきだ。目標がすり替わっているこうしたコメントは、まともな上司なら一番嫌う言葉なので注意しておこう。
話を戻すが、「ROIの視点」とは、かけた予算に対してちゃんと効果がでるかどうかということである。当たり前の話だが、ROIが取れることが保証されていれば、だれも反対はしない。
上司を説得できる企画書とは、ROIが取れることが数値的根拠に基づいてきちんと説明できるものを指す。もちろん、正確な効果を事前に予測することは、だれもできない。ただ、数値的な資料を入手し、そうした数値データに基づいて企画書を作成することで、ある程度予測することは可能だ。感覚的な企画案ではなく、「ROIの視点」を持ち、数値に基づいた企画書を心がけよう。

冒頭のダメな企画書は何が悪い?

では、冒頭で図1に示したダメな企画書のどこが悪かったのかを解説しよう。
ちょっと見ると、目的やコンセプトがわかりやすく明記され、ユーザビリティやアクセシビリティなど、最近のキーワードも盛り込まれている。自社のウェブサイトのユーザーセグメントも見やすく、良さそうな企画書である。しかし、私が上司ならば、この企画書で予算をかけてリニューアルしようとは思わない。何点かあるので箇条書きにしてみる。
  • 背景や現在のウェブサイトの状況(アクセス状況など)が記述されていなので、現状がどうなっているのか、まったく把握できない。
  • ユーザビリティの向上がウェブサイトに必要だと断言しているが、なぜユーザビリティが必要なのかがわからない。
  • コンセプトを含め、「使いやすい○○」「わかりやすい□□」「ファッショナブルな△△」など、曖昧な表現が多く、どういうサイトになるか想像もできない。
  • 来訪ユーザーセグメントの根拠がなく、図を表記しているにもかかわらず、その説明がないのでこの図を表記した意味がわからない。
  • 数値データがまったくない。
私が前述した「現状分析」「数値情報」「ROIの視点」がまったくないため、あらためて読み直すと、根拠がないことに気づくはずだ。

上司を納得させられる企画書例

まず、書かなければならない要素を抜き出してみよう。ウェブサイトリニューアルの必要性があるのであれば、まず、「現状分析」は必要不可欠だ。その分析データで特に改善しなければならないものを「課題」に記す。そして改善する場合の「目標数値」、目標を達成するための「具体的施策」となる(図2)。
図2 良い企画書の構成要素
図2 良い企画書の構成要素(画像をクリックで拡大)
この要素を元に企画書を書いてみよう。
まず現状分析では、サイトのアクセス解析の基本データを見てみる。直帰率(ここではサイト全体の平均直帰率)が多いことと、平均ページビュー数が少ないことがわかったとしよう。
そこを掘り下げて、半年前ぐらいからの直帰率と平均ページビューの推移を調べてみたところ、3月から悪化傾向にあることがわかった。こうした場合、3月の前と後で何かウェブサイト上で変化がなかったか調べてみるのが一番だ。ここでは、新製品発売がいったん途切れ、それにともなってウェブサイトの情報更新が止まったことが判明した。
そこから、課題として、ウェブサイトの情報更新は新製品発売に依存していたことがわかり、ウェブサイトの活性化を図るためには新製品発売に依存しない情報更新やコンテンツ提供のためのサイト改善が必要なことがわかってくる。
次に目標数値だ。新製品が毎月発売されていた時点での平均ページビュー数は2ページ程度、また直帰率は、50%前後。リニューアルを行う場合は、新製品情報以外の情報提供(コンテンツ更新)と新着情報告知などの改善を行うことを考えると、3月以前の数値よりも上回ることができると想定される。平均ページビュー数を2.5ページ以上、直帰率を45%以下と目標を定めておこう。
最後は具体的な施策の内容だ。ここ書く施策が目標達成可能かどうか判断される材料となるため、最後まで手を抜かない。
平均ページビュー数増加のためには、ユーザーアンケートを行い、ユーザーが求める新コンテンツを掲載していくこととし、直帰率を軽減するためには、直帰率の高いページを抜き出し、その原因を把握して改善を図ることを明記する。
こうしてできあがったのが、次の企画書だ。
図3 上司にOKを出させる良い企画書の例
図3 上司にOKを出させる良い企画書の例(画像をクリックで拡大)
図1の「ダメな企画書例」と比べてみてほしい。現状分析を行い過去のデータも活用しつつ課題を明確化し、数値データに基づいて目標や施策を立てることで、説得できる企画書に変えることができる。
これ以外にも、前述した上司のミッションなど、考慮しなければならない点はいくつもあるが、まずは、ダメな企画書例とそうでないもの違いを理解してほしい。

 

 

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