2013年1月10日木曜日

スマートフォン時代の端末基点マーケティングとは? 「決済」視点からスマホサービスの未来を読む

■「端末機点マーケティング」いいネーミングだ。使おう。(担当:i

 

スマートフォン時代の端末基点マーケティングとは?
「決済」視点からスマホサービスの未来を読む

 

2011年のスマートフォン出荷台数は前年比45.1%増の7億1750万台。スマートフォンが普及するにつれて、消費者の生活スタイルは変わりつつある。今回は「決済」という視点から、スマートフォン時代に求められるサービスや変容する企業のマーケティングについて、電子マネー市場に知見の深い岩田氏が解説する。(バックナンバーはこちら

カード先進国「韓国」から垣間見たスマホ決済サービスの未来

 韓国は世界でも有数なカード先進国だ。一昨年、韓国へ旅行した時にそれを実感した。タクシーを降りる時、韓国に住む友人が非接触IC付きスマートフォンで料金を支払ったのだが、決済直後に明細を記したメールが届いてびっくりした。
 日本ではスマートフォンで支払うことはあってもカード会社から瞬時にメールが届くことはない。そして友人はその記録を家計簿代わりに使っていると、当然のように言っていた。日本では、スマートフォンに届いた利用控えを家計簿として大切に使っている人など見たこともない。
 カード会社はメインカード化の「切り札」としてこのスマ―トフォンサービスに力を入れているというが、クレジットカード分野の次のトレンドを目撃した気がした。

スマホで変わる消費者の生活スタイル

 米IDCが2012年12月に公表した市場推計によると、2012年の携帯電話 世界出荷台数は前年比1.4%増の約17億台にとどまり、過去3年間で最も低い成長率になった。一方でスマートフォンの出荷台数は前年比45.1%増の7億1750万台と、高成長が続くと予測している。携帯電話市場に占める割合も2014年にはフューチャーフォンを逆転するといわれ、この勢いは当分止まりそうもない。
 スマートフォンを携帯電話の延長の通信機器のように思っている人もいるかもしれないが、これは小さなパソコンであって、全く新しいメディアだ。そして、私たちの生活スタイルを大きく変える影響力のある機器である。
 例えばテレビやパソコンを買いたい時、かつては一番安い店を探すのに以前は電気街を一軒一軒回ったものだが、いまはスマホの比較サイトで一番安い店を探してから行くようになった。これまでのような労力と時間をかける必要はなくなったのだ。
 そして、デートの仕方も変わった。以前は彼女と食事をするレストランを事前に決めておいたものだが、今は現地で落ち合ってからでも何とかなる。どの店でクーポンが使えるのか、どんなキャンペーンをやっているのか、GPS機能を使えば簡単に探すことができる。スマ―トフォンを駆使すれば、デートの準備にかける時間を短縮することができる。この革命は、すごいことである。

命名、端末基点マーケティング!

 このように、スマ―トフォンの登場により、これまでの消費生活が様変わりし始めている。とくに無料アプリやクーポン、ポイント、ギフトカード、電子マネーといった様々なサービスが登場し、それらを使うことで全く新しい快適な新しい消費スタイルを体験できる。
 もちろん消費者の行動の変化に合わせて、サービスを提供している事業者も素早く対応しなければならない。とくに消費者相手のマーケティングは大きな変革を迫られているといってよいだろう。
 では、スマートフォン時代に、事業者のマーケティングはどう変わるのか。簡単に言ってしまえば、比較にならないほどきめ細かで正確な販売促進が可能になるということだ。
 これまでのマーケティングが、テレビや雑誌などのマスメディアを使って、漠然とした販売促進しかできなかったのに対して、これからは個々のライフスタイル、嗜好に合わせてピンポイントで的確な情報を送ることができるようになる。
 何といってもスマートフォンは24時間、人々の手元にあるメディア。有効な情報であれば、その人の気持ちに直接深く突き刺さる。事業者はスマートフォンを介してユーザーと接点をもつことで、人々の購買意欲を高めるように働きかけることができる。すべてをスマートフォンという端末を基点に考えるので、この方法を私は「端末基点マーケティング」と呼んでいる。

ポイントは「決済前/決済後」という時間の流れ

 そして、スマートフォンだからこそ、電子マネーをはじめ、ポイントカード、クーポン、プリペイドカードなども搭載することができる。また多彩なアプリケーションをダウンロードして連携することで、数々のサービスが実現できる。指先で簡単に操作できるアプリは、これまでにないアイテムといえる。
 すでに位置情報(GPS)アプリケーションへの注目は高まっているが、私が期待しているのはシミュレーション機能だ。この機能により、リボルビング払いの金利やポイントを計算するといった使い方が可能になる。これらのジャンルから火がつくだろう。
 そして、スマートフォンを効果的に使う場合に忘れてならないのは、決済時点を常に考えることだ。つまり、「決済前」「決済後」という時間の流れの中で、企業はメールやクーポン、ポイント、ゲームなど様々な「お得」「お楽しみ」を仕掛けて顧客を囲い込み、リピートにつなげていく。この視点を肝に銘じておくことが必要だ。
 すでに様々な事例が登場しているが、それを「決済前」と「決済後」に分けて考えていこう。

「決済前」のユーザーの欲望を満たすサービス

 まずユーザーがスマートフォンで買い物をしようとしたときに感じるのは、「他店の価格と比較してみたい」という衝動だ。スマートフォンなら比較サイトを手の中で確認できるから、店に行く途中に電車の中でチェックできる。
「決済前」の事例
・スーパーで商品に付けられたバーコードをスマホのカメラで取り込むと、自動的に他店の価格と比較した最安値が出る
・電子チラシサイト「Shufoo!」でチラシを閲覧すると、Tポイントが貯まるサービスが登場
・店頭に貼られたステッカーやポスターにスマホをかざすだけで、その店のポイントやクーポン、キャンペーン情報などを知ることができる。ドラッグストアなど初めて入る店舗についての情報を補足できる
・GPS機能を利用することで、初めて訪れた街でも、どの店でクーポンが使えるのか、どんなキャンペーンをやっているのか簡単に知ることができる
・シミュレーション機能を使って支払いの前にリボルビング払いの金利やポイントを計算することができ、有利なものを選べる
・フェイスブック(米国)ではポイント優遇を実施。「いいね!」したサイトで買い物をするとポイントが優遇されたり割引になる
 これまでのカードやフューチャーフォンでは、会員向けに漠然とキャンペーンを打っていればよかったが、スマートフォンになると、大量の情報を即座に処理でき、正確な場所の表示でき、より売場に直結したマーケティングが実現可能になる。
 もちろん利用者のニーズも大きく変化し、スマホで決済するからには「必ずお得がついてくる」という意識がいま以上に強くなるだろう。店やカード会社はその「強欲」に付き合わされるが、生き残るためには、通らねばならぬ関門であり、その結果、ポイント、クーポン、割引き競争はさらに熾烈になる。

「決済後」のフォローでリピーター客を養成

 その一方で、「決済後」のサービスもいろいろでてきている。決済後のフォローが、リピーター客を獲得するためには重要になってくる。何をどうアピールするかが課題だ。そのひとつとして、「くじ」や「スロット」の抽選で景品が当たるといったおまけサービスがあって、こちらも人気となっている。
「決済後」の事例
・ローソンはドコモと組んでトルカくじを実施中。一定金額の買い物をすると、トルカくじを一回引く。当たる確率がかなり高いのでリピーターが増えている。「スマホのイベントを成功させるには、よく当たるようにするのがコツ」という。小さなお得をたくさん提供することで、多くの利用者を得て、リピートを望めるようになる
・決済後に利用控えをメールで送るカード会社がでてきた。韓国では、それを家計簿代わりに使うようになっているというが、日本でもスマホ決済が増えれば、同様の傾向がでてくるだろう
・決済後、ありがとうメールをだして感謝の言葉を伝えるとともに、使いすぎていた場合に、すぐにリボ払いに変えるようにアナウンスする決済サービスも登場。
・Gポイントが貯めたポイントを交換する新しい仕組みを作ってスマホ対応。アイコンを指で移動し別のアイコンに重ねるだけで交換が完了するというもの
 このようにスマートフォン時代の決済回りは、がらりと変わる。加盟店をはじめ、銀行もカード会社も、決済時点・端末基点で考えないと追いつけなくなる。一方、利用者にとってはダイレクトにお得を訴求できるようになるので、さらにポイント、クーポンの知識を求められるようになる。知っていれば得をするが、知らないと大損するという時代がやってきた。スマホで始まる決済革命に勝利するために、各社は熾烈な争いを繰り広げている。次回は「端末基点マーケティング」の展開として、O2Oマーケティングと決済業界の盟主交代について語っていきたい。

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