「今度こそ、出るのか出ないのか」
9月10日に米アップルが新型iPhoneを発表する見通しだが、日本国内では「NTTドコモは新型iPhoneを発売するのか」という点に注目が集まっている。
「ツートップ戦略」を掲げ、既存の携帯電話ユーザーをスマートフォン(スマホ)へシフトさせることには成功したものの、MNP(番号持ち運び制度)ではいまだに惨敗が続くドコモ。「一人負け」の状況を脱する切り札は、もはやiPhoneしか残っていない。
この最後のカードをいよいよ切るのではないか、と業界関係者は注目している。
■iPhone発売のための臨時休業?
そんななか、複数のネットニュースサイトが「(アップルの発表直後に)ドコモがiPhone導入の記者会見を開くのではないか」という観測記事を掲載した。根拠となったのは、東京・有楽町にあるスマホの顧客サポートのための拠点「ドコモスマートフォンラウンジ」が、新型iPhone発表日の翌日に当たる11日に臨時休業するというものだ。
だが、ソフトバンクもKDDIも、過去にiPhoneの導入に関して独自の記者会見を開いたことはない。
通信事業者は、アップルが正式に発表会を開いた直後から、料金や納入台数などの条件を打ち合わせるのが通例である。そのため、発表会翌日に記者会見を開いて具体的な話ができるとは考えにくい。
ドコモは今回の臨時休業が「スタッフ研修のためのもの」と説明している。「iPhone導入のためのスタッフ研修では?」とうがった見方もしたくなるが、「休業するのはかなり前から決まっていた」とiPhone導入の可能性をあくまで否定する。
■導入直前は「ノーコメント」のはず
一方、最近になってドコモの坪内和人副社長が様々な媒体のインタビューに答えている。そのなかでは「状況は変わっていない」と断言。発言の内容も相変わらず「全体の2~3割程度なら導入は可能」「アップルからの条件次第」という、山田隆持前社長、加藤薫現社長と同じスタンスを貫いている。
この状況を見て、KDDI関係者も「今度こそ、ドコモがiPhoneを導入すると思い、様々な準備をしてきた。だが、最近の幹部の発言を見る限り、今回は見送りなのかもしれない」と語る。
通信事業者がアップルと取引をする際には「秘密保持契約書」を結ぶ。
08年にiPhone3Gを導入したときのソフトバンクの孫正義社長も、11年にiPhone4Sを売り始めたときのKDDIの田中孝司社長も、いずれも導入直前には何を聞かれても「ノーコメント」という立場を貫いた。iPhone導入が決まり、秘密保持契約を交わした瞬間から「ノーコメント」にならざるを得ないのだ。
新型iPhoneの発表を2週間後に控えた現在でも、iPhoneについていろいろと発言するドコモに対しては、アップルと現在も「秘密保持契約書」を交わしていないと見るのが妥当だ。アップルとの取引のあるKDDIが「今回はなさそうだ」と語るのも、そう判断したからだろう。
(この記事はモバイル業界をウオッチしているジャーナリストが執筆しました)
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