2013年8月29日木曜日

パトカーにのりツイッターで翌日逮捕!? 警察にたてつくとどうなる?

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 北海道の釧路で、19歳の少年らがパトカーの屋根に登り、パトカーを傷つけたとして器物損壊の疑いで逮捕されるという事件がありました。 
 この事件は、25日の午後10時に発覚して翌日26日の逮捕となったもので、非常に迅速な捜査といえます。 
北海道警のパトカー乗りツイッター 器物損壊容疑で少年2人逮捕」(北海道新聞2013年8月26日) 

 もちろん、この記事を読めば、警察に対する犯罪だから警察は非常に気合いを入れて捜査したということは誰もが思うところでしょう。 
 過去にも私の大学生の頃なので1990年頃の話ですが、警察官複数が取締中に暴走族から襲撃を受け負傷、パトカーも破壊され、これに対し県警は県下の警察官数百名を動員、装甲車も出して路上封鎖、暴走族を100名を一斉に検挙というものがありました。 
 普段は全く暴走族取締にやる気を感じないのですが、警察が被害を受けた場合の対応は全く違うというんだなと実感したものです。 
交通違反取締方法から改めて問い直す 問われる警察の姿勢と車優先社会 

 ところで、警察官に対する犯罪としては、公務執行妨害罪というものがあります。 
 通常の暴行罪や脅迫罪による場合よりも格段に保護されています(公務執行妨害罪の対象は警察官だけではありませんが。)。それはその保護の対象が「公務」だからです。 
 その法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金」となっていますが、2006年以前は罰金刑はありませんでした。その意味では多少、刑が軽くなったとはいえます。 
 とはいえ、もともと公務執行妨害罪の「暴行・脅迫」の概念が広く解釈されているので、ほとんどの場合、公務執行妨害罪が「成立」することになります。後述するように公務執行妨害罪の場合には基本的には起訴猶予はありませんから、公務執行妨害罪で起訴されるとすべて懲役ないしは禁固刑となってしまいます(執行猶予は付されるでしょうが。)。 
 そのような重い刑罰しかないため事案に応じた解決という点では過酷な刑罰となることから、罰金刑が選択できるようになったというものです。 
 罰金刑が選択できるようになる前は、公務執行妨害罪を傷害罪へと罪名を落として罰金刑を求刑するなどの「対処」もされてきました。 

 しかし、実態はどうでしょう。 
 もともと公務執行妨害罪は、現場の警察が濫用してきたものです。 
 特に反体制派がちょっとでも抵抗しようものなら公務執行妨害罪で逮捕してきたり、あるいは無理矢理、暴行だ、脅迫だと騒ぎ立てて公務執行妨害罪で逮捕してきた、その意味では完全なでっち上げ事件の温床が公務執行妨害罪でした。 
 罰金刑を選択できるようにしたなどということによって刑が軽くなったなどいうものではないのです。 
 「転び公妨」と言われているもので、主には公安警察が用いてきた手段です。 
 警察官が自分でわざと転んで、周囲の警察官が公務執行妨害罪だと言って逮捕するやり方です。 

 先般、公務執行妨害罪に対する事件で無罪判決が出ました。 
反原発デモで公務執行妨害、男性に無罪判決 大阪地裁「故意性に疑問残る」」(産経2013年8月26日) 
石井裁判官は判決理由で、警察官はいずれも前田さんともみ合って転倒し、負傷したと認定。しかし、転倒状況や現場の映像などから「胸ぐらをつかんで押してきたという警察官の供述は映像で確認できない。ふらついた被告が警察官の腕をつかんで転倒した事故の可能性がある」と述べ、故意の暴行という犯罪の証明がないと結論づけた。 

 この事件で驚くのは検察官の求刑が懲役2年6月としている点です。 
 通常の傷害事件で、ここまで求刑されることはなく、略式罰金がいいところでしょう。それが検察は懲役2年6月も求刑しているのです。 
 しかも、警察官の供述は信用できないとばっさりと切られているのですから、反原発デモに対する弾圧というこの事件の本質が見えたというべきでしょう。 
 公務執行妨害罪とはこのように悪用できる犯罪類型なのです。 
 仮にこれで起訴されず、「起訴猶予」となったとしても逮捕・勾留という多大な不利益を負うことは間違いありませんし、恐らくはこの被告人となった人と関係する組織などは家宅捜索を受けたことと思います。起訴猶予で終わろうともデモへの弾圧という性質を消し去ることはできないのです。 
 それはデモに参加しようとする国民に対して確実に萎縮効果をもたらします。 

 かつて私が司法修習生のとき、指導担当検事に聞いたことがありました。どんなに結果が軽くても公務執行妨害罪の場合には起訴するのかと。まだその当時は罰金刑などなかった時代です。 
 指導担当検事の答えは「起訴するね。」でした。 
 警察との関係を考えれば、検察庁としては原則として起訴しないという選択肢はないということです。 

 このように警察に対して向かってくるものに対しては警察は容赦はないし、また自ら犯罪をでっち上げることも可能という意味では、日本の警察も決して中立などではなく、体制を守るための暴力機関だということです。 
 決して、パトカーを傷つけた少年がさっさと逮捕されたね、という笑い話のようにみていてはダメだとういことです。 
 警察組織の民主化こそ必要でしょう。

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