2013年2月14日木曜日

スマホの役割と真実「スマホ決済サービスを押さえる事業者がO2O時代の覇者になる」

■マーケジンより。。。


スマホの役割と真実「スマホ決済サービスを押さえる事業者がO2O時代の覇者になる」



リアル市場の売上を狙うWeb事業者たち

 スマホの登場を熱烈に歓迎しているのは、何も利用者だけではない。それ以上に期待を寄せているのがWeb事業者たちだ。インターネットからリアル(実店舗)へ顧客を送客するO2Oという新しいモデルを実現させるためにも、スマホは欠かせないと考えているからだ。
 ネット事業で急成長を遂げたグーグルやアマゾン、ヤフーなどの大手Web事業者たちは、その勢いを駆ってリアル市場になだれこもうとしている。EC市場で強大な力を持つ彼らにとって、次の目標となるリアル市場は魅力的だ。
野村総合研究所「インターネット経済調査報告書」より
 野村総合研究所の「インターネット経済調査報告書」によると、リアル店舗等での購入消費支出規模約110兆のうち、21.8兆円もの消費にインターネットが関与しているという。これは家計支出年報の品目のうち、店舗などでの消費(インターネット以外での消費活動)の約19%相当である。この数字からわかるように、EC市場が拡大しているとは言っても、リアルな店舗の売上規模と比べるとまだまだ小さい。そこでEC市場で自信をつけたWeb事業者たちがその豊かな市場を狙って積極的に動き出したのである。

ネットとリアルの溝を埋めるスマートフォン

 実をいえば、インターネットとリアル店舗を結ぶマーケティングのモデルは、「クリック&モルタル」と呼ばれて2000年頃から存在していた。ただ、これはあくまでリアル側が主体であった。つまり、ごく簡単に言うと、リアル店舗のブランド力を活かして、オンラインでも商品を売るということだ。たとえば、スーパーがリアル店舗のブランド力や認知度、信頼性を活かして、ネットスーパーを設けて販路を広げる動きなどだ。
 それに対して、O2Oはネットからリアルへと攻め込むもので、主体はネット側であり、流れが逆なのである。オンライン上のさまざまな仕掛けやクチコミなどの評価が、リアル店舗の売上に貢献する。
 またインターネットへ接続するツールがPC主流の時代は、ネットとリアルの間のギャップが大きく、オンラインとオフラインをスムーズに行き来できなかった。当時は、まずパソコンでインターネットにアクセスして、クーポンを紙に印刷して、それを実店舗に持ち込んでいた。この手順は、消費者にとって面倒くさいものであった。
 ところが、今やスマホが登場し、こうした悩みが一挙に解決した。スマホならネットとリアルの溝に橋を架けてくれて、「いつでも、どこでも」場所を選ばずに利用できる。クーポンでお得を取ろうという時にも、まずスマホにダウンロードしておき、店で見せるだけで割引を受けられる。これなら手軽である。
 また、買い物をするたびにクレジットカード番号を入力する必要もなく、ネットとリアルで同じIDを使ってワンクリックで決済することもできる。たとえば、スマホを持ってファストフード店に入り、ハンバーガーとコーヒーを注文すると、それだけで決済、つまり支払いが完了する、そんなことまですでに現実になっている。
 このようにスマホの急速な普及は、決済業界にO2Oという新たなうねりをもたらしている。そして、Web事業者たちはスマホが新しい時代を開く理想のツールと期待している。
 

決済サービスによる顧客囲い込み作戦

 ヤフーを例にとって、Web事業者の新しい動きを見てみよう。 
 いま、ヤフーの合言葉は「スマホファースト」だ。この動きはヤフーだけではない。ほんの数年前までは、Web事業者は新しいサービスを始めるときパソコン対応を優先したものだが、いまやスマホが最優先だ。
 Yahoo! JAPANは1996年にスタートした。そして1999年に「Yahoo! ショッピング」と「Yahoo! オークション」が始まった。ユーザーは「Yahoo! JAPAN ID」に会員登録すれば、ネットショッピングやオークションの他にも「Yahoo! ポイント」「Yahoo! ロコ」など数多くのサービスを利用できる。そして昨年、新たなプラットフォームをつくって、決済サービスにも本腰を入れている。
 それが現在約2,300万人の会員を擁する「Yahoo! ウォレット」である。ヤフー以外のサービスでも決済可能という点が大きな特徴で、会員になれば、ほぼすべてのネット決済をカバーできる。
「Yahoo! ウォレット」が利用できるマーク・ボタン
 
 ウォレットは財布を意味する英語。これまでバラバラだったいろいろなサイトの決済を「Yahoo! ウォレット」という一つの財布にまとめ、パッケージにして提供することで利便性を高め、顧客を囲い込もうとする戦略だ。
 すでにネット内の決済はこのウォレットでほぼ対応できるようになっているが、ヤフーの狙いはその先のリアルの攻略である。リアル店舗においても、このウォレットで決済サービス囲い込みを目論んでいるが、そう実現は簡単ではない。
 とくに実店舗で、電子マネーやクレジットカードのようにウォレットをユーザーに利用してもらうには、高いハードルを越えなければならない。リアル世界の決済サービスは、カード会社がすでに支配しているからだ。
 そこで、ヤフーはすでに実績のある有力カード会社とアライアンスを組むことで、リアルでの決済サービスへの進出を加速させるという方法を選んだ。その提携相手が、JCBとクレディセゾンだ。

JCB

 ヤフーがJCBとの業務提携を発表したのが2011年8月。この提携の目的として謳われたのは、「EC分野におけるサービス向上と、O2O分野におけるリアル店舗への集客支援」だった。ヤフーにとってのメリットは、JCBが全国に有している780万の加盟店網だ。この膨大な加盟店をネットサービスに取り込むことができれば、ヤフーの決済戦略は大きく前進する。同時にJCBの数千万という会員数も魅力だ。
 JCBにとってのこの提携の目的は、ネット利用者をリアル店舗に誘導し、カード決済額を増やすことだ。「Yahoo! ウォレット」の会員数は約2,300万人で、一か月のサイトへのアクセス数はパソコンとスマートフォンを合わせると6,000万人を超える。このヤフーの集客能力はJCBにとって大きな魅力である。

クレディセゾン

 2011年11月、ヤフーは新たにクレディセゾンとの提携を発表した。JCBの国際ブランドだけではカバーできないビザ陣営の大手と提携したかたちだ。これによってヤフーは、3,580万人といわれるクレディセゾン・グループのカード会員を、自社のネットサービスに誘導し、「Yahoo! ウォレット」を使った決済サービスの利用を促すことができるようになった。
 最大のポイントは、JCBとの提携と同様、ヤフーのIDとクレディセゾンのセゾンカードやUCカード会員向けWebサービス「ネットアンサー・アットユーネット」のIDが連携したこと。「ネットアンサー」はこの提携を発表した時点で、640万人の会員を有しており、ヤフーにとってメリットは大きい。
「Yahoo! ロコ」
 ヤフーにとってクレディセゾンとの提携においては、O2Oの推進が大きなテーマであり、「Yahoo! ロコ」(位置確認サービス)が重要な役割を果たしている。
 クレディセゾンの提携企業である西友や良品計画、ヤマダ電気などの割引や優待情報を「Yahoo! ロコ」に掲載して来店につなげるという活動はその基本。全国に138か所あるセゾンカウンターを、「Yahoo! ロコ」で得た特典を提供したり、実店舗への送客を促したりする場として活用している。

O2O市場が成熟する時

 ヤフーとカード会社との提携を分析していくと、ヤフーが何を狙っているのかが見えてくる。ヤフーは、まずネット決済でウォレットを使うことに慣れてもらい、それから実店舗でも買い物に使ってもらうという流れを想定している。
 そのうえで、ウォレットの利用を促すために、ウォレットにポイントやクーポン、電子マネーやクレジットカードを紐づけて、JCBやセゾン、UCカードの店でも買い物してポイントが貯まるようにしている。
 O2O時代は始まったばかりであり、これからが本番である。現時点ではまだ、実店舗でスマホを使って「Yahoo! ウォレット」で決済することはできないが、近い将来、スマホをかざすだけでいろいろな店でクレジットカード決済ができるようになる。その時こそが、O2O市場成熟の時といえる。

スマホでの決済サービスを押さえた者が、O2O時代の盟主になる

 このようにネットで急成長を遂げたWeb事業者は、いまやリアル市場の陣取り合戦の主役を演じる勢いである。ヤフーをはじめとするWeb事業者たちは、ネットとリアルの決済サービスを押さえながらリアル市場に進出してくる。この背景として、スマホの普及があり、Web事業者のリアル市場への進出はスマホ革命のひとつの側面と言えるだろう。
 スマホ革命により、決済業界ではWeb事業者を含めた盟主争いが勃発している。
 近い将来、決済のツールとしてこれまで重宝されてきたプラスチックカードに、スマホが取って代わることが予想される。電子マネーはもちろん、ポイントやクーポン、それにクレジットカードまでもスマホだけで事足りる未来はすぐそこまで近づいている。
 したがって、今後はリアルなお金の流れよりもむしろ、スマホを中心とした決済(オンラインでのお金の流れ)、ポイントの動向が注目を集めるようになるだろう。そして、リアルもネットもあらゆる決済がスマホひとつでできるようになれば、「スマホ決済」を押さえた事業者が、本当の意味でのO2O市場の盟主となるだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿

自己紹介

自分の写真
東京都, Japan
h-imoto@netyear.net 暇なわけではございません。仕事の一環で収集している情報の共有です!