2013年2月4日月曜日

生まれ変わったXperia ソニー担当者が見せたこだわり



生まれ変わったXperia ソニー担当者が見せたこだわり 



ソニーが1月上旬の「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」で発表したスマートフォン(スマホ)「Xperia Z」を、NTTドコモが2月9日に発売する。NTTドコモの加藤薫社長が「春モデルのイチオシ」と太鼓判を押したように、非常に高い期待を集めている端末だ。実際「予約も好調」(加藤社長)といい、春モデルのなかでも人気機種になるのは間違いなさそうだ。
 従来の曲面を生かしたデザインを一新するなど、明らかにこれまでのモデルとは違いが見えるXperia Z。その開発の背景には何があったのか。担当したソニーモバイルコミュニケーションズのUX商品企画部バイスプレジデント黒住吉郎氏に話を聞いた。
ソニーがCESで発表した「Xperia Z」=ロイター
ソニーがCESで発表した「Xperia Z」=ロイター
■平井CEOからも細かな指摘
 昨年、ソニーは、ソニー・エリクソンモバイルコミュニケーションズを完全子会社化し(ソニーモバイルコミュニケーションズに社名を変更)、ソニー本体との関係を接近させた。スマホとタブレット、テレビは対等な関係となり、電機メーカーにとっては今後、機器同士の連携が重要になってくる。機器連携を強化するためには、開発体制も連携しなくてはいけない。
 Xperia Zは「まさにソニー・エリクソンからソニーモバイルに生まれ変わるタイミングでスタートした1号機だった」(黒住氏)という。
 ソニーは危機に陥った経営を立て直すにあたって、「モバイル」「イメージング」「ゲーム」の3分野を強化すると宣言している。モバイルの中心となるXperiaの開発に対しても、平井一夫ソニー最高経営責任者(CEO)や鈴木国正ソニー執行役EVP(エグゼクティブ・バイスプレジデント)兼ソニーモバイルコミュニケーションズCEOからの厳しい「ダメ出し」があるという。
 「平井(CEO)からは従来モデルとボタンの位置が変わっていると注意されるし、充電端子のコネクタも『セクシーじゃない』と指摘されてきた。トップ自らが商品の細かいところまでに気を配るようになったことで、社員の末端に至るまで開発に対する考えが変わってきた。結果、いい商品ができるようになってきた」(黒住氏)

鈴木執行役はソニーのコンシューマー商品の責任者であり、ソニーモバイルのCEOとしての立場でもある。その鈴木執行役がソニー社内の事業部の間にあった壁を積極的に壊したことで、ソニーでカメラのセンサーを開発するチームやサイバーショットの開発チームから、ソニーモバイルが設計や機能面でのサポートを得られるようになったという。
ソニーモバイルコミュニケーションズのUX商品企画部バイスプレジデント黒住吉郎氏
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ソニーモバイルコミュニケーションズのUX商品企画部バイスプレジデント黒住吉郎氏
 機器連携の面においては、近距離無線通信技術である「NFC(Near Field Communication)」への対応が一気に進みつつある。NFCの対応機種は、半年ほど前はスピーカーやヘッドホンくらいしかなかったが、いまではテレビのリモコンや小型のサーバー装置などにも搭載されるようになった。従来はHDMIとテレビをケーブルでつなぐ程度しかなかった機器連携が、NFCの採用により様々な用途に応用可能になってきた。黒住氏は、「これまでのソニーではあり得なかったスピード感で機器連携プロジェクトが動いている」と言う。
■「デザインの哲学は変えていない」
 デザインも大きく変えた。これまでのXperiaシリーズは曲面を生かしたデザインが多かったが、Xperia Zは真四角な板状のデザインを採用した。
「(Xperiaの)過去モデルの『X10』、『arc』、『NX』などは曲線なデザインだったが、Xperia Zでもデザインに対するフィロソフィー(哲学)は変えていないつもり。大きな画面になることで、本体を縦にしたり横にしたりと、様々な持ち方をするなかで、ユーザーに最適なデザインを選択した」と黒住氏は語る。
 今回ソニーは、デザインテイストが同一なタブレット「Xperia Tablet Z」も発売する。「これまでのタブレットはデザインや見た目がそろっていなかったのが反省点だったが、今回からはきっちりとそろえた。これも実は平井(CEO)自身がこだわったポイントでもある」(黒住氏)
 Xperia ZとXperia Tablet Zでは、カメラの厚さやバッテリー、基板の厚さなどをそろえて薄型化できるによう徹底的にこだわり、すべてを合わせ込んで部材を選定した。ここで妥協するとカメラ部分だけが膨らむといったことがあるが、今回の製品では妥協はせず、きっちりと平面に仕上げられた。さらに電源ボタン部分にはアルミ素材を採用し、細かい切り込みを入れたことで高級感を増している。
 
「ハッキリ言って、(コストが)高い。でも商品企画側としては質感を高めたいので、社内でもむちゃを言ってきた。(コスト管理で)数字を計算する人からは『これで何が変わるのか』と言われる。でも採用しないことには、これまでと違う質感にはならないと説得して回ってきた」(黒住氏)
■「ソニーモバイルはグループ内の『末っ子』」
 開発担当者のこだわりと経営陣の理解やダメ出しを受けた、ソニーモバイルの第1号ともいうべきXperia ZとXperia Tablet Z。両製品は質感が高く、これまでとはひと味違うスマホとタブレットに進化した。
 黒住氏は、ソニーグループの中でのソニーモバイルの位置づけをこう語った。「ソニーのなかでも末っ子的な存在だと思う。甘えながら、わがままだけど面白いことをやっているという役割」――。
 自分たちのやりたいことを、家族に甘えながらも力を借りて実行しつつあるソニーモバイル。末っ子の暴れっぷりによって、いつしかソニー全体が面白く、目の離せない家族になる日は近いかもしれない。
石川温(いしかわ・つつむ)
 月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著は、本連載を基にした「iPhone5で始まる! スマホ最終戦争―『モバイルの達人』が見た最前線」。ニコニコチャンネルにてメルマガ(http://ch.nicovideo.jp/channel/226)を配信中。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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