2013年5月23日木曜日

世界的に導入が進む「ソーシャルリスニング」、その実態と有用性を探る

ソーシャルメディアは、個人にとどまらず、企業のマーケティング戦略にとって重要なツールとして活用されてきている。
 Facebook や Twitter を通じて、企業が消費者に向けて情報発信をすることは、もはや当たり前の手法となり、最近ではビッグデータなどの話題にも注目が集まっている。
 こうした中で、注目されているのが、「ソーシャルリスニング」というマーケティング手法だ。ソーシャルメディア上で、どのような情報が発信されているかを調べることによって、社会の現在の姿を知ることができ、企業のマーケティング戦略にとって重要な情報ソースとして活用することができるのだ。その実態について、トレンド総研がまとめたレポートを元に紹介する。

会社員のソーシャルアカウント所有率は75% 1位は Facebook

会社員の過半数以上が週に1回以上 SNS を閲覧
 レポートではまず、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用について、会社員500名を対象にした調査をまとめている。
 会社員たちの SNS の利用状況(アカウントの所有状況)については、「Facebook」が51%と最も高く、以下「mixi」が50%、「Twitter」が43%という状況になっている。また、1つでも SNS のアカウントを持っているという人は、全体の74%に上ります。
 さらに、1週間に1度はこれらの SNS を閲覧しているというアクティブなユーザーがどれだけいるのかを調べたところ、SNS アカウント所有者の75%、全体の55%が、いずれかの SNS に対して、「1週間に1回以上閲覧している」と回答。25歳~39歳の会社員の内、2人に1人は、少なくとも1週間に1回以上は SNS を閲覧していることが分かった。

「SNS を仕事で活かしている」は約3割にとどまる

仕事中に SNS を閲覧する人は、約7割
 それでは、会社員にとって、SNS はどういった役割を持っているのだろうか。中でも、仕事に SNS を役立てているという人は、どれほどいるのだろうか。
 「SNSを1週間1回以上利用している」と答えた人を対象に調査を行ったところでは、「仕事中に、これらの SNS を閲覧することがありますか?」という質問に69%が「ある」と回答。一方で、「SNS上の情報が仕事に活かされた経験がある」という人は28%と、およそ3割となっている。
 具体的に、どのように仕事に活かすことができたのかについては、「自社の商品に関するお客様の声を聞くことができた。(クリエイティブ系・31歳女性)」「ソーシャルメディアを活用してイベントの告知をしている。(企画系・28歳男性)」といった意見が多く、情報収集や情報発信に、SNS を活かすという人が多いようだ。
 また、「次の仕事につながる関係ができた。(営業系・33歳男性)」「IT技術のグループを立ち上げ、ディスカッションを行った。(技術系・27歳男性)」などの社外の人との人脈構築に関する意見や、「職場のコミュニケーションがとりやすくなった。(事務系・37歳男性)」といった社内コミュニケーションの円滑化に関する意見も。SNS が仕事に活かされる場面は多岐に渡るようだ。
 とはいえ、仕事中に SNS を利用している人がおよそ7割に上るのに対して、SNS を仕事に活かせているという人はおよそ3割。レポートでは、「情報収集・発信から社内外の人間関係の構築・円滑化と、SNS が活躍する場面は様々で、かつ、多くの人にとって必要な内容であることを考えると、今後、仕事において SNS を活かしたいという人は、増加していくのではないかと予測される」としている。

ソーシャルリスニングはマーケティング戦略に不可欠な存在に

 この調査結果では、SNS を日常的に利用している会社員のおよそ3割が、情報収集・発信を中心とする幅広い用途で、仕事に SNS を上手く活用しているものの、大部分の人が SNS を仕事に活かしきれていないということがわかった。
 こうした現状の理由としては、ソーシャルメディア上の情報はその量が膨大で、必要な情報は散在しており、ソーシャルメディア上の情報を上手に活用するには、情報収集から選定、分析と、ソーシャルメディアリテラシーをはじめとする、高いスキルが要求されるというソーシャルメディア上の情報の特性が考えられる。そこで、注目すべきマーケティング手法が、「ソーシャルリスニング」だ。ソーシャルメディア上の情報を分析することにより、現在のトレンドを把握したり、将来的な流行を予測したりすることを指すソーシャルリスニングは、戦略策定や意思決定、リスクマネジメントと、幅広く活用することが可能となる。
 そして近年、このソーシャルリスニングの仕組みをシステム化して誰でも簡単に行うことができるようになるサービスの提供が広がりつつある。そのひとつである「Salesforce Marketing Cloud」を全世界で3,000社以上に提供している株式会社セールスフォース・ドットコムブランドマネージャーの加藤希尊氏は、「クラウドサービスの導入などにより、上手にシステム化しなければ、本当に効果的なソーシャルリスニングを行なうことは困難だ」と指摘する。
 加藤氏によると、ソーシャルリスニングのシステムを導入することにより、マーケティング、営業、カスタマーサポートなど、企業活動における幅広い領域において、ソーシャルリスニングはその役割を果たすことが可能となるという。例えば、「ブランドモニタリング」という手法では、自社のブランドや競合するブランドが、ソーシャルメディア上で、誰に、どのような時、どんな文脈で語られているのかという情報を集める。その情報を分析することで、自社ブランドのアピールポイントや改善すべき点が分かるのだ。
 世界的にソーシャルリスニングは多くの企業に導入が進んでおり、加藤氏によると米国フォーチュン誌が選定する、総収入額が大きい企業ランキング「フォーチュン500」に選出された企業の過半数を占める55%が「Salesforce Marketing Cloud」を導入しているという。しかし一方で、日本での導入率は決して高いとは言えないとのこと。加藤氏は、「多くの企業では、ソーシャルリスニングの重要性や有効性にまだ気付いていない。今後、ソーシャルリスニングに関する注目が高まり認知が拡大すれば、日本でもソーシャルリスニングを取り入れる企業が急速に拡大していくだろう」と語っている。なお、セールスフォース・ドットコムでは5月28日にカンファレンスイベント「Customer Company Tour」を東京都内で予定しており、企業のソーシャルメディア活用に関してもセッションを予定しているという。

ジャーナリスト津田大介氏が語る「ソーシャルリスニング」の有用性

 加藤氏が指摘するように、日本における「ソーシャルリスニング」の認知や普及はこれからという状況。日本における SNS を取り巻く状況は今後どのように変化していくのだろうか。ジャーナリストの津田大介氏は、日米のソーシャルメディアの違いを挙げ、日本における「ソーシャルリスニング」の有用性を指摘する。
 津田氏によると、日米におけるソーシャルメディアの違いには、発信できる情報量の差があげられるという。例えば、“情報”というワードをとりあげると、日本語では“情報”で2文字。一方、英語では“information”で11文字。同じ文字数で比較すれば、日本語の情報量は英語の3倍程度になり、文字数制限のある Twitter では英語圏の国々よりも多くの情報が流通していることになるのだ。
 また、日本人は自身の知っている情報をシェアするのが、アメリカ人は自分のことをアップするのが、好きな傾向にあるという。例えば、アメリカでは自分の写真をシェアするのが好きな傾向にあるが、日本では行った場所や見たもの、体験したことなど、ソーシャルグラフで繋がる友人にとって有益な情報をシェアするのだ。
 「流通する情報量は多く、他人にとって有益な情報がやり取りされている日本のソーシャルメディア。こうした特徴を考慮すれば、日本におけるソーシャルリスニングの有効性は明らかだと言えるだろう」(津田氏)。
 また津田氏は、「ソーシャルリスニングの有効性については、現在の Twitter を見れば明らか」とも指摘する。津田氏によると、インターネットの普及によって消費者の購買行動におけるクチコミの重要性は大きく高まっているが、多くの消費者にとって Twitter の検索は、すでに最も効率的なクチコミ検索ツールとなっているという。「消費者が参考にする情報なのだから、企業がその情報を収集しない手はない」(津田氏)。
 ただ、ソーシャルリスニングを行なう際には、気をつけなければならない点もあるという。「ソーシャルメディア上には、ノイズも多く、悪意を持ったネガティブな動きがある可能性もあり、その際には冷静に対応することが必要だ。単純にどんな情報があるかという点だけでなく、プロフィールやタイムライン、フォロワー数から、その人の属性を分析することが重要。そうすることで、本当に重要な情報を効率的にピックアップすることができるだろう」(津田氏)。(インターネットコム)
(2013年5月23日  読売新聞)

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