2013年5月9日木曜日

トヨタ、カイゼン効果1.3兆円 社長「執念のたまもの」

トヨタ自動車の2014年3月期の連結営業利益米国会計基準)が1兆8000億円と前期比36%増え、過去最高だった08年3月期の約8割の水準まで回復する。背景にあるのが継続的に生産コストを削減する「カイゼン」効果だ。金融危機以降の5年で累計1兆3000億円規模に達し、足元の円高修正も相まって収益をけん引する。
決算発表で記者の質問に答えるトヨタ自動車の豊田社長(右)=8日午後、東京都文京区
決算発表で記者の質問に答えるトヨタ自動車の豊田社長(右)=8日午後、東京都文京区
 「執念のたまもの」。8日の記者会見で豊田章男社長は前期の単独営業損益が、2421億円の黒字(前の期は4398億円の赤字)と5期ぶりに黒字化した背景をこう語った。国内生産のほぼ半分を輸出に回すため、単独決算は特に為替に左右されやすい。前期の平均為替レートは1ドル=83円。従来の体質なら90円台でないと単独黒字化は難しかったはずだ。
 体質強化の原動力はお家芸のカイゼンだ。金融危機が直撃した09年3月期に4600億円強の連結営業赤字に転落したのを受け、抜本的なコスト削減策に着手した。
■製造ライン短縮
 10万台でも利益が出せるラインを作る――。まず着手したのが、運営コストの重い製造ラインの抜本的な見直しだ。必要性の薄い工程をなくし、ラインの長さをほぼ半分に短縮した。これによりラインに必要な設備や人員が大幅に減り、固定費が絞り込まれた。
 新設ラインでは黒字を出すのに必要な生産台数が危機前の20万台からほぼ半減。設備投資もピーク(07年3月期)の約1.5兆円から現在は8000億円規模に減り、償却負担も軽くなった。
 調達コストの削減効果も大きい。異なる車種で共有する部品の数を増やし、車1台で3万品とされる部品点数の削減を進めた。「円高で厳しい。ご配慮いただきたい」。さらに調達担当役員などが取引先の部品メーカーを歴訪し、それまでを上回る毎年3%程度の値下げを要請して回った。


 北米、欧州から新興国と急速に戦線を拡大した結果、08年当時、利益を出すのに必要な採算ラインである「損益分岐点台数」は「800万台をはるかに超えていた」(幹部)。だが、年平均で3000億円規模のカイゼン効果により、損益分岐点は大きく下がり、極端な円高にならない限り「700万台程度でも黒字を出せる体質になった」(同社役員)。
 収益体質のスリム化が進んだところに円安効果と販売増が重なり、収益力が上向いた。今期の単独営業黒字は6000億円に拡大する見通し。
■新興国戦略カギ
 もう一つがトヨタの代名詞ともいえるハイブリッド車(HV)。1997年のHV登場以降、高価格の基幹部品や普及を優先した低価格などがネックとなり、1台当たりの損益が黒字となることは少なかった。
 それが昨年は小型HV「アクア」や「プリウス」が伸び、販売台数は122万台に拡大。トヨタの国内新車販売の4割をHVが占めるようになり、量産効果やコスト削減も相まって「国内では黒字が定着しつつある」(幹部)。
 今後の課題は最大市場となった中国をはじめとする新興国戦略だ。中国では独フォルクスワーゲン(VW)が17%とシェア首位だが、トヨタは5%程度で低迷する。新興国の環境対応車でも、割安な価格で低燃費を実現する「ダウンサイジング」で米欧勢が先行し、HV普及率はなお低い。持続的な利益成長には、中期的な市場拡大が見込まれる新興国での競争力強化がカギを握る。

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