2013年9月4日水曜日

MSがノキア携帯買収 劇薬100ドルスマホに「最後の望み」

http://www.nikkei.com/article/DGXBZO59247380T00C13A9000000/?dg=1

■ここまできたか。。。(担当:i)


MSがノキア携帯買収 劇薬100ドルスマホに「最後の望み」 
ジャーナリスト 石川 温

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2013/9/4 7:10
 米マイクロソフト(MS)が失地回復に向けて大きな賭けに打って出た。3日、ノキア(フィンランド)の携帯電話事業を総額54億4000万ユーロ(約7140億円)で買収すると発表。両社は「スマートフォン(スマホ)の敗者連合」とも呼ばれていたが、本格的な事業の統合によって最後の巻き返しを図る。
 ターゲットとしているのはライバル各社が続々と100ドルスマホを投入している新興国などの激戦市場だ。かねて両社を苦しめてきた低価格機で形勢を逆転しようともくろむが、ここでの戦線拡大はMSの既存のビジネスモデルと収益力を破壊する劇薬になりかねない。
マイクロソフトとの提携を会見するノキアのエロップCEO(2011年2月)
マイクロソフトとの提携を会見するノキアのエロップCEO(2011年2月)
■取り残された2強が提携
 ほんの数年前まで「新興国の携帯電話市場に強い企業」といえば、迷うことなく「ノキア」が挙げられた。その牙城を崩したのが100ドルスマホに代表される低価格機だ。
 ノキアは携帯電話に自社開発のOS(基本ソフト)に「Symbian(シンビアン)」を搭載。圧倒的な低価格を武器に欧州だけでなくアジアやアフリカなどで巨大なシェアを獲得していた。
 だが、07年にはアップルがiPhoneを投入し、世界でスマホブームが起きた。米グーグルのOS「Android」を採用した価格の安いスマホも登場し、ノキアのドル箱だった中国やアジアの市場を席巻、同社はたちまち苦しい立場に追い込まれた。
 そんな2011年2月、MSとノキアは戦略的な提携を発表した。
 この時点で「敗者連合」と位置づけるのは少々酷であろう。11年2月時点のOS別シェアでは依然としてシンビアンが首位を維持。ただ、成長性という観点では雲行きが怪しくなっていた。ノキアはMSとの提携を通じて、シンビアンに代わる主要OSに「ウィンドウズフォン」を採用。スマホ「Lumia(ルミア)」の発売を決めた。
 MSにとっても、ノキアは残された最後のパートナーだった。
 10万円以上もする高価格なパソコンを、新興国に広めるのは難しい。だが、携帯電話端末、しかもノキアが強い低価格帯向けのラインアップであれば、新興国で影響力を及ぼすことも可能だ。MSが提携に踏み切ったのは、ノキアが世界中にもつ販売網が魅力的だったからだ。
 ノキアの最高経営責任者(CEO)であるスティーブン・エロップ氏は、提携を発表する5カ月前にMSから移籍したばかり。提携内容も「経営資源を統合し開発ロードマップを共有する」という、ほとんど事業統合に近い内容だった。MSはもともと早期に買収する計画を想定していたに違いない。
■端末台数が急減し売上高も半減
 しかし、両社はチャンスを生かせなかった。「ルミア」は当初の想定していたほど売れず、ノキアは引き続き苦戦を強いられることになる。
高機能モデルから低価格帯までいくつかの機種を用意したが、ハイスペック端末はiPhoneと直接競合し、全く勝負にならなかった。かろうじて、欧州やインド、中南米などの市場で売れたのが低価格帯のラインアップだった。
 結果、ノキアの端末出荷台数は携帯電話とスマートフォンのどちらも急減。売上高も右肩下がりとなり、2011年第4四半期には約60億ユーロだったものが、2013年第2四半期には約27億ユーロ強と半分以下に落ち込んでいる。
 MSのスマホ関連事業も鳴かず飛ばずだ。昨年11月に発売したスマホOS「ウィンドウズフォン8」では、優先開発パートナーとしてノキア以外に、韓国サムスン電子や台湾の宏達国際電子(HTC)、中国の華為技術(ファーウェイ)を迎え入れた。だが、いずれもAndroidスマホを主力製品としている会社だ。米国のマイクロソフトストアでもルミアとHTC製ウィンドウズフォンしか展示がなく、iPhoneやAndroidスマホに比べて存在感で大きく見劣りしている。
 今、端末メーカーの多くは第三のOSとして「ファイヤーフォックスOS」や「Tizen(タイゼン)」などに目を向け始めている。もはや、どのメーカーもMSには注目していない。富士通のように「ウィンドウズフォンはぜひやりたい」(大谷信雄執行役員常務)という企業もあるが、もはや多くの端末メーカーには頼れない。
2012年1月の米家電見本市会場で「ルミア900」を発表するマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO(左)、ノキアのスティーブン・エロップCEO(中央)、AT&Tのラルフ・デ・ラ・ベガCEO(右)=AP
2012年1月の米家電見本市会場で「ルミア900」を発表するマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEO(左)、ノキアのスティーブン・エロップCEO(中央)、AT&Tのラルフ・デ・ラ・ベガCEO(右)=AP
■アップルになりたいMS
 そんななか「いちるの望み」として大勝負に出たのが今回のノキア買収である。
 MSは昨年から「デバイス&サービスカンパニー」を目指すと宣言している。目指すのは「メーカー」だ。「社内の経営方針資料を見ても、想定している敵はアップル。デバイスメーカーの立場でアップルと互角に戦おうとしている」(MS関係者)
 そこで一度は破談となった買収話を復活。スマートフォンやタブレット(多機能携帯端末)を開発する3万2000人の従業員をもつ企業を買収する決断をした。

8月末にMSのスティーブ・バルマーCEOが1年以内の引退を発表。スティーブン・エロップ氏がバルマー氏の後継CEOとなる可能性も模索する中で、買収が決まった可能性もある。
 MSは3日、ノキアとの共同会見で、今回の買収を通じて5年後の18年末に全世界で17億台と予測されるスマホ市場で15%のシェアを獲得する計画を発表した。
 数を追求するためには低価格のスマホで存在感を発揮する必要がある。ノキアのブランド力や販売網、技術力を生かしつつ、今後はタブレット端末「サーフェス」のように自社ブランドで攻勢をかける戦略をとるのが現実的な路線だろう。
ノキアとマイクロソフトはスマートフォン市場での挽回を図るために提携を発表した(2011年2月)=ロイター
ノキアとマイクロソフトはスマートフォン市場での挽回を図るために提携を発表した(2011年2月)=ロイター
■復活の鍵は「サーフェス・フォン」
 iPhoneが苦手とするのが、新興国を中心とする廉価版の市場だ。廉価版iPhoneが登場するという情報が広がっているが、端末販売で高収益を確保する必要があるアップルがiPhoneを100ドルにするのはさすがに難しい。
 膨大な資金を抱えるMSならば、利益を度外視した100ドルスマホ「サーフェス・フォン」(仮称)を市場に投入し、新興国市場を席巻する可能性もゼロではない。日本市場でもグーグル「ネクサス4」のように、「SIMロックフリーでサーフェス・フォンを売り出す」選択肢も出てくる。
 だが、ハードウエアビジネスは、これまでMSが強みを発揮してきたソフトウエアとは全く利益構造が異なる。利益率が50%近いウィンドウズや、70%近いオフィスと違って、薄利多売で規模を確保することが重要となる。
 これまで、共存共栄を築いてきたメーカーとの関係も変わってくるだろう。米モトローラ・モビリティーを買収したグーグルにも、Androidスマホを作るメーカーから「モトローラだけを特別扱いするのではないか」と不満の声が聞かれた。MSが独自タブレット「サーフェス」を販売する際にも、「自分たちの領域を踏み荒らすのか」と主張するメーカーがあった。
 そうした雑音を振り切って昨年10月に発売したサーフェスだが、6月末の決算で9億ドルもの巨額な評価損を計上したばかり。MSにとって、成功の道筋が見えないハード事業へのさらなる挑戦は既存のビジネスモデルを破壊することにもつながりかねない。
 3日の米株式市場ではMS株が前週末比4.6%安と急落、一方、ノキアの米国預託証券(ADR)は30%以上も急騰した。出遅れたスマホ市場での起死回生は可能なのか。可能だとしてもMSがパソコン時代に築いた収益モデルは崩れるのではないか。今回の買収が両社の経営に与える影響を市場は複雑な思いでみつめている。
石川温(いしかわ・つつむ)
 月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。近著は、本連載を基にした「iPhone5で始まる! スマホ最終戦争―『モバイルの達人』が見た最前線」。ニコニコチャンネルにてメルマガ(http://ch.nicovideo.jp/channel/226)を配信中。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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