2013年9月19日木曜日

auがドコモのiPhone導入の露払い、「いずれどのキャリアも同じ端末を扱う世界に収れんする」

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130913/504445/?k2


[アナリストの視点]野村證券 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 日本通信リサーチ マネージング・ディレクター 増野大作氏

 

「ドコモのiPhoneがどうなるか。それはこれまでauがやってきたことを見れば分かりますよね。『auスマートパス』もiPhoneで使えます。音楽再生アプリの『LISMO』もiPhoneで使えます。こうした先例があります」。野村證券 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 日本通信リサーチ マネージング・ディレクターの増野大作氏は、KDDI(au)という先行事例を見れば、ドコモのiPhoneがどうなっていくかが分かると指摘する。auのiPhoneは、ドコモのiPhone導入のいわば“露払い”だったとも言える。
 ドコモは同社が展開する各種サービスのマルチキャリア化、マルチプラットフォーム化を進めていた(関連記事:dマーケットはマルチキャリアへ、まずは個別課金系サービスから対応する)。当初からiPhone導入を想定していたかどうかは現時点では不明だが、結果的に同社のiPhone導入においても自社サービスの迅速な展開が可能になったといえる。spモードメールやメッセージR/同Sは10月1日から、dマーケット関連は、dアニメストアとdミュージック(月額コース)が多少遅れるものの、dゲームやdビデオなど大部分のdマーケット関連サービスは10月中には提供を開始する予定である。
 いずれにせよドコモのiPhone導入で、KDDI、ソフトバンクモバイルの大手3社が同じ端末を扱うことになり、これまでMNPにおいて“草刈り場”と化していたドコモも、KDDI、ソフトバンクモバイルとiPhoneの取扱いという点において同じ土俵に立つことになる。野村證券の増野氏にドコモのiPhone導入後の変化について聞いた。

ドコモは様々なサービスも自ら手掛けています。
野村證券 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 日本通信リサーチ マネージング・ディレクター 増野大作氏
野村證券 エクイティ・リサーチ部 デピュティ・ヘッド 日本通信リサーチ マネージング・ディレクター 増野大作氏
 iPhoneはAndroidよりも自由度は低いですから、自由度を広げる交渉をしていくほかない、というのがここ1年のKDDI。ドコモの各種サービスがどうなるかはKDDIと同じだと考えればシンプルな話です。KDDIではiPhoneでも「auスマートパス」を入れて、音楽再生アプリの「LISMO」も使えるようにしました。単純にauと同じようになっていくだけだと思います。
ある意味、KDDIがドコモのiPhone導入の露払いになった。
 KDDIは情熱を持ってauスマートパスの導入をアップルに認めてもらって、それ以降も様々なサービスをiPhoneで使えるようにしてきています。交渉ごとなので、熱意がない人には開かれない。すべてはKDDI次第、ドコモ次第だということだと思います。
端末メーカーにはどのような変化があるのでしょうか。
 単純にドコモのiPhoneが売れる分だけ他メーカーの売上が減るとなると、がんばらないメーカーは脱落していく。メーカー数は限られてきますよね。ただ日本は競争条件が他国と違う点もあります。米国では例えばiPhoneが199ドル、Androidのハイエンド機も199ドルと同じ値段で売られている。一方日本はiPhoneが安く売られている。例えば原価が4万5000円のAndroid端末が2万円で売られ、それより原価の高いiPhoneが実質ゼロ円といった売られ方をしている。
 iPhoneは年末までに全世界で270の事業者が扱います。Androidの端末を作るメーカーも、取り扱ってもらえる携帯電話事業者を増やす努力をしなければならないでしょう。実際、日本でも富士通のARROWSシリーズやシャープのAQUOS PHONEシリーズは3事業者から販売されています。
 一方で携帯電話事業者からしても、どこでもiPhoneを売っているんだったら、Android端末も売らないと見栄えが悪い。そうすると、結果的にどこに行っても同じ端末を売っている世界に近づく。例えば米国ではベライゾンに行っても、AT&Tに行っても、同じ端末が並んでいるわけです。自然に日本でもそういった世界に収れんしていくと思います。半年後は分からないですけど、2年もすればそうなるのではないでしょうか。


どこも同じような製品を扱うとスマートフォンもコモディティになる。
 そうは言われますが、まず技術的な面で言うと、今回のiPhone 5sは世界中で誰も64ビットのCPUを搭載するとは思っていなかった。その点ではまだまだコモディティにはなっていない。少なくともあと1年2年はそうでしょう。
 64ビット化の直接的な影響はこれから。まだアプリが少ないので体感できませんが、ユーザーのエクスペリエンスが変わってくることはあるかもしれません。もちろん、ゲームくらいにしか使われないかもしれませんが。
 通信の世界ではiPhoneに限らず、スマートフォンのTD-LTE対応は進むでしょう。下り250Mbpsのサービスの計画もあります。最初はデータ端末からだと思いますが、スマートフォンにも組み込まれていくでしょう。
 TD-LTEに関しては、アップルが発表したモデル以外のiPhoneが中国でTD-LTEの試験認証を取得しています。試験認証は中国移動向けです。中国でTD-LTEの商用ライセンスはまだ下りていませんが、Wall Street Jornalなども報道しています(関連記事)。来年はTD-LTEが盛り上がります。すべてのメーカーがFDDとTDDの両方のLTEに対応する端末を用意してくることになるでしょう。
 スマートフォンの普及率の点では、ドコモは世界的に見てもスマートフォン比率が低い事業者です。2013年6月末時点でスマートフォン比率は契約者の37%でしかない。それが今後例えば6割になるだけで大きな変化があると思います。KDDIも世界的に見れば低いほうです。コモディティ化以前に、日本はまだスマートフォンをどんどん売っていく段階です。
携帯電話事業者間の競争は。
 iPhoneが対応するLTEの周波数から見ると、ドコモのLTEは現状2.1GHz帯が中心で、800MHz帯はほとんどないですよね。1.7GHz帯はまだLTEをやっていない。せっかくそれらの周波数のLTEに対応するiPhoneを導入するのにそこを使わないのはもったいないですよね。ドコモがiPhoneの取扱いをいつ決めたか分かりませんが、800MHz帯と1.7GHz帯のLTE対応が遅れており、そこを急ぐ必要があるでしょう。
 ソフトバンクモバイルは2.1GHz帯でLTEをやっていて、都心部ではイー・アクセスの1.7GHz帯をLTEで使っている。900MHz帯によるLTEは来年春。KDDIは今回同社が使っている800MHz帯にiPhoneが対応しました。KDDIは5MHz幅を3G、10MHz幅をLTEで使っています(関連記事:iPhone 5s/5cの対応バンドに見るアップルの深意、そして携帯3社の競争の行方)。過去も今後もそうですが、半年程度で状況は変化していくのではないでしょうか。

 

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