2013年11月21日木曜日

O2Oからオムニチャネルへ、加速する顧客とのコミュニケーション革命

http://markezine.jp/article/detail/18706


 よく使われる「O2O」という言葉ですが、最近「ネットから店舗への送客」の枠を超えた新たな試みが増えています。この新連載では「LINE」「WEAR」など新勢力が注目を集めるこの領域を、Showcase Gigの新田剛史氏が解説します。

進化する顧客とのコミュニケーション

 Showcase Gigの新田剛史です。連載を始めるにあたって、簡単に自己紹介を。私は東京ガールズコレクションの立ち上げ、ミクシィにおけるソーシャルアプリの黎明期など、主にデジタルマーケティングやモバイルコマースの領域でさまざまなサービスを手掛けてきました。2012年には株式会社Showcase Gig(ショーケース・ギグ)を設立し、現在は「O:der」というモバイルウォレットサービスを提供しています。
 この連載では、これまでの経験を踏まえ、「O2Oからオムニチャネルへ」と題して、いま生まれつつある新たな顧客とのコミュニケーションについて、さまざまな角度から考察していきたいと思います。

O2Oはもう終わり?

 MarkeZineの読者にとってはすでにおなじみのキーワード「O2O(Online to Offline)」。オンラインからクーポン等でリアル店舗への送客を行う手法として説明されることが多いと思います。O2Oの名のもとにさまざまなキャンペーンが実施されていますが、「それもO2O?」と言いたくなるようなものもあり、釈然としない方も多いのではないでしょうか。
 そもそもこのO2Oという言葉、いかにも海外からの輸入品のように聞こえますが、実は米国ベンチャー界隈などではほとんど使われていないのです。シリコンバレーなどでもネットとリアルを結びつけるテクノロジーの領域のサービスは次々と誕生していますが、「決済」「インストアマーケティング」「デジタルクーポン」「カスタマーロイヤリティ」「バーコードスキャン」などそれぞれの領域を追求しており、なんとなくO2Oがムーブメントのように紹介されている日本国内とは少し様相が違っています。
 かわってこの1年のあいだに注目を集め始めた言葉が「オムニチャネル(Omni Channel)」です。国内ではO2Oとほぼ同じ用途で使われることもありますが、ここにきて具体的な事例も増えており、「腹落ち感があるのはこっちのほうだ」という声も強くなっています。このあたりの事情を少し整理してみましょう。

オムニチャネル推進への動き

 「オムニチャネル」は、米国の小売業界で2年ほど前から議論されるようになった言葉で、おおまかに言うと「オムニ(すべての)チャネルを顧客との接触・販売機会にする」ことを指しています。
 先日セブン&アイ グループがシステム開発に1000億円を投じて、5年後をめどに全300万商品の在庫オンライン上で一元化するという報道がありました。通販で注文したものを配送するか、店頭受け取りするかを選べるようになるそうです。また、東急ハンズはこの動きに先行しており、今年の9月からECサイトから注文した商品を店頭で受け取るサービスを開始しました。このほかにも、ルミネ大丸松坂屋など続々とオムニチャネル化の動きを見せています。

店頭でもネットでも、買いたいときに、買いたいところで

 現在の消費者は、重いものや大きなものはネットで注文して配送してもらい、現物を確認してすぐ持ち帰りたい場合は店頭で購入する。自宅でも職場でも、スマ―トフォンやタブレットで好きなときに買い物をして、好きな場所で受け取ることが可能になりました。
 しかし、便利な一方で「ショールーミング」という問題が表面化してきました。店舗で商品を確認したら、その場でスマートフォンを使って検索し、最安値のネットショップで購入することが可能になったのです。店舗は実物を確認するショールームと化し、売上はネットにとられてしまうことへの危機感も高まっていました。では、なぜいま各社がオムニチャネルを推進しているのでしょうか?

オムニチャネル=顧客接点の最大化

 顧客の利便性向上はもちろん重要です。しかしそれ以上に、マーケティングにおいて大きな意味を持ちます。実店舗を持つ企業は、買ってもらう場所は店頭でもネットでもどこでもいい。むしろ、実店舗をショールームとして利用してもらい、納得したうえでネットで買ってもらう。ネットで気になった商品を店舗に見に来て買ってもらう、あるいは、ネットで買った商品を店舗で受け取る。オムニチャネルの促進によって、ネットショップと実店舗の連携を強化し、利便性を高め、可能な限り顧客接点を増やし、販売やコミュニケーションの機会を増やすことができるのです。
 それらの顧客接点から生まれるもの、それがデジタルマーケティングの要である「データ」です。実店舗で買った人とネットショップで買った人のユーザーのIDを統合することで、買物履歴などのデータを一元管理し、誰が、いつ、どこで何を買ったかを把握することができます。こうしたデータが、現代のマーケティングにとって重要であることは言うまでもないでしょう。米スターバックスは、チーフデジタルオフィサー(CDO)という役職を置いて「デジタル化率100%」を目指しており、とくにモバイルでの支払い率向上に注力しています。また、ウォールマートなどの小売り業態でもテクノロジーベンチャーを積極的に買収するなど、この領域での動きを加速させています。
 次回以降では、事例をもとにこれから目指すべきデジタルマーケティングのかたちを探っていきます。

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