2014年5月15日木曜日

ルネサス、トヨタ流で工場復活なるか  大部屋活動をアレンジ

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140513/264495/?n_cid=nbpnbo_mlp




 経営再建中の半導体大手、ルネサスエレクトロニクス。昨年6月にオムロン出身の作田久男氏が代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に就任して新たな経営体制が発足して以降、拠点の統廃合や事業売却、早期退職の実施など、ありとあらゆる構造改革を加速させている。
 中でも製造拠点の統廃合については、5インチのシリコンウエハーを用いる高崎工場(群馬県)を閉鎖したほか、3月末には12インチのシリコンウエハーを用いる鶴岡工場(山形県)をソニーに譲渡した。残された製造拠点も再編が進められ、4月1日付で製造子会社を設立している。
 ネガティブな話題が多いルネサスだが、工場の競争力を取り戻すためにある活動を進めている。舞台は自動車向けマイコンの主力工場である那珂工場(茨城県)。5階にある会議室で、毎朝9時から30分間ほど開かれる「大部屋」活動だ。
那珂工場で毎朝実施される「大部屋」活動の様子

壁を見るだけでプロジェクトを把握

 舞台となる会議室には、壁一面に進行中のプロジェクトの工程表が貼られている。ここに工場長から各工程の責任者まで総勢70~80人が一堂に集結し、壁に貼られた工程表を前にプロジェクトの進捗状況を話し合う。
 装置トラブルなどの課題を抱えている工程には内容を手書きした付箋を貼っていく。解決策や対応者も時間内に決定する。数日後、課題が解決した際には、付箋上に「よくできました」と書かれたシールを貼っていく。
 「ここに貼られている『紙』を見るだけで、プロジェクトの課題をすべて把握できる」。製造子会社であるルネサスセミコンダクタマニュファクチャリングの宮本佳幸社長は、大部屋活動の利点をこう語る。

半導体の工場は一般的に工程ごとの縄張り意識が強く、他部門の課題に無関心なことが多い。ルネサスも例外ではなかった。結果として情報共有が進まず、品質や納期の問題が起きやすかった。大部屋活動の導入で、部門の壁を越えてアイデアが飛び交うようになった。
 実は、那珂工場で大部屋活動が始まったのは3年前の東日本大震災直後だ。地震によって那珂工場の内部は激しく損傷。支援すべく駆けつけた、トヨタ自動車の林南八技監の提案がきっかけで導入された。
 自動車メーカーや建設業者など支援に駆け付けた人数は、最大で1日2500人に達した。これほどの大人数が復旧作業の作業状況を共有するには大部屋活動による見える化が最適だった。那珂工場が当初計画の半分となる3カ月での復旧を実現できた裏には、トヨタ流のノウハウがあったわけだ。

プロジェクト管理に導入

 自動車業界では、工場トラブルのような有事の際には大部屋活動を実施するのは常識だという。あくまでも有事に限定した取り組みだったが、ルネサスは震災以降も大部屋活動を継続している。さらに、那珂工場以外での製造拠点でも同様の取り組みを広げている。
 ルネサスが進めるのは、年間を通して進める工場全体でのプロジェクト管理だ。2011年は「品質向上」、2012年は「コスト削減」をテーマに冒頭のような大部屋活動が実施された。大部屋活動を日々の業務にアレンジしたことは、視察に訪れた自動車メーカーから褒められることもあるそうだ。
 現在、那珂工場で取り組む大部屋活動は、3月末にソニーに売却した鶴岡工場で手掛けていた自動車用マイコンの製造プロセス移管だ。製造技術の世代別に、大きく3つのプロセスの移管が進められている。
工程表には付箋が貼られていく(写真:北山宏一)
 那珂工場は旧ルネサステクノロジ、鶴岡工場は旧NECエレクトロニクスが作り上げた製造工場であるため移管は簡単ではない。シリコンウエハーに金属薄膜を積層していく各プロセスの名称もすべて異なるため、大部屋には両社が採用していた製造プロセスの名称を併記した計画表を壁一面に貼ることで、議論がスムーズに進められるような工夫を施した。
 既に、配線の加工寸法が最も大きい世代の製造プロセスは移管がほぼ完了した。大部屋活動によって、「これまでに比べて3分の1程度の期間で達成できた」と宮本社長は話す。

ルネサスが5月9日に発表した2014年3月期の決算では、営業利益が676億円となり3期ぶりの営業黒字を達成。純損益は53億円の赤字だったものの、前期比で1623億円改善した。那珂工場で進める大部屋活動も少なからず貢献したようだ。
 とはいえ、ルネサスの経営再建にメドが立ったわけではない。作田会長は決算会見で「2013年は生産拠点の統廃合は進んだが、構造改革の進捗は4合目だ」と慎重姿勢を崩さない。
 ルネサスは2014年、設計や開発機能の統合と拠点の統廃合を進めていく考えだ。これらの構造改革が達成されれば、「2014年度を過ぎれば(進捗は)6~7合目になる」(作田会長)見通しだ。
 設計部門の構造改革について作田会長は、「出身母体が違う中でどのように統合していくかがポイントになる」と話す。
 外部からもたらされた大部屋活動によって、融合をスピーディーに実現したルネサス。製造と設計の違いがあるため、そのままでは難しいかもしれないが、大部屋活動で培ったノウハウを生かすことができれば構造改革の進捗が高まるかもしれない。

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