2013年4月2日火曜日

苦戦続きのドコモ、「両刃の剣」の新戦略




苦戦続きのドコモ、「両刃の剣」の新戦略



苦戦続きのNTTドコモが「両刃の剣」ともいえる新戦略に打って出る。今春以降、独自ポータル「dマーケット」をKDDIやソフトバンクなど、他社ユーザーにも順次開放していくのだ。

 dマーケットは、動画見放題の「dビデオ」(会員数400万)、アニメ見放題の「dアニメストア」(同30万)などのデジタルコンテンツに加え、ヘルスケア関連や日用品の通販など幅広い品ぞろえを誇る。スマホ時代におけるドコモのコンテンツ事業の中核的サービスだ。

 携帯電話会社の垣根を越えてコンテンツを楽しめる事例はこれまでもあった。ただ、ソフトバンクの動画配信「UULA」のように、アイフォーンではauユーザーも使える、といった限定的なものだった。というのも携帯会社のベースはあくまで回線契約。回線だけを売る「土管化」を避ける付加価値としてコンテンツが位置づけられていたためだ。

 しかし、スマホ、タブレット、パソコンなどで同じコンテンツを楽しむ「マルチデバイス化」が加速。グーグル、アマゾン、楽天などのコンテンツは、どの端末からも利用できる。回線に縛り付けることが、携帯会社のコンテンツ事業の成長を制約するようになってきた。
 開放戦略のカギを握るのが「ドコモ会員構想」だ。これまでは各コンテンツサービスを電話番号とひも付けしてきたが、契約者の認証などに使われる「ドコモID」に切り替え、これを新たにドコモ会員とする。他社回線の契約者であっても、ドコモ会員としてID登録すればサービスを利用できるようにしていく。

 こうすれば、ドコモが取り扱っていないアイフォーンなどからでも、ドコモのコンテンツサービスを利用可能になる。実は、3月に発売した独自タブレット「dtab」は回線にこだわらない姿勢を明確にした象徴的な端末だ。ドコモ回線の契約者向けの端末だが、あくまでWi-Fi専用。「社内では回線契約がないのに何の利益があるのか、という強い反対の声もあった」(マーケティング部・武岡雅則プロダクト戦略担当課長)。しかし、コンテンツの売り上げを伸ばしていく開放戦略へと舵を切った。

■ 顧客流出加速のリスク

 一方で、大きなリスクもある。ドコモのコンテンツをドコモ回線以外でも楽しめるようになれば、安心して他社へ乗り換えるユーザーも現れるだろう。ドコモはただでさえau、ソフトバンクへの流出が進み、MNP(番号持ち運び制度)による流出は1月に14万4700件、2月も9万3200件と厳しい。この流れが加速するかもしれない。

 もちろん、ドコモはこのリスクも認識している。「価格面やサービス内容で、他社ユーザーよりドコモの回線ユーザーを優遇する仕組みを考えている」(スマートコミュニケーションサービス部・斎藤剛担当部長)。

 開放戦略によりドコモが見据えるのは国内市場だけではない。近年では、海外のコンテンツ配信事業者である独ネットモバイル、伊ボンジョルノを買収するなど、海外展開の本格化も視野に入れる。

 情報通信総合研究所の岸田重行主任研究員は「他社ユーザーに開放することで、顧客流出などの懸念はある。だが、コンテンツ業者は、潜在顧客が増えるため、dマーケットを重視するようになる。それがドコモにもプラスになるはず」とメリットを指摘する。

 過去、独自コンテンツを集めた「iモード」で顧客を自社の回線へ囲い込むモデルを成功させたドコモ。他社に先んじる今回の開放戦略は、はたして吉と出るだろうか。
田邉 佳介

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